しかし、ちょうどそのとき、「ウォン‐ウォン!」と甲高かんだかく叫さけぶ声がして、ラベンダー・ブラウンがどこからともなく矢のように飛んできたかと思うと、ロンの腕に飛び込んだ。見ていた何人かの生徒が冷やかし笑いをした。ハーマイオニーはコロコロ笑い、「あそこにテーブルがあるわ……ジニー、来る?」と言った。
「ううん。ディーンと会う約束をしたから」ジニーが言った。
しかしハリーはふと、ジニーの声があまり乗り気ではないのに気づいた。ロンとラベンダーが、レスリングよろしく立ったままロックをかけ合っているのをあとに残し、ハリーは空いているテーブルにハーマイオニーを連れていった。
「それで、君のクリスマスはどうだったの?」
「まあまあよ」ハーマイオニーは肩をすくめた。
「何も特別なことはなかったわ。ウォン‐ウォンのところはどうだったの?」
「いますぐ話すけど」ハリーが言った。「あのさ、ハーマイオニー、だめかな――?」
「だめ」ハーマイオニーがにべもなく言った。「言うだけむだよ」
「もしかしてと思ったんだ。だって、クリスマスの間に――」
「五百年物のワインを一樽ひとたる飲み干したのは『太ふとった婦人レディ』よ、ハリー。私じゃないわ。それで、私に話したい重要なニュースがあるって、何だったの?」
ハーマイオニーのこの剣幕けんまくでは、いまは議論ぎろんできそうもないと、ハリーはロンの話題を諦あきらめて、立ち聞きしたマルフォイとスネイプの会話を話して聞かせた。
話し終わったとき、ハーマイオニーはちょっと考えていたが、やがて口を開いた。
「こうは考えられない――?」
「――スネイプがマルフォイに援助えんじょを申し出るふりをして、マルフォイのやろうとしていることをしゃべらせようという計けい略りゃく?」
「まあ、そうね」ハーマイオニーが言った。
「ロンのパパも、ルーピンもそう考えている」ハリーがしぶしぶ認めた。
「でも、マルフォイが何か企たくらんでることが、これではっきり証しょう明めいされた。これは否定できない」
「できないわね」ハーマイオニーがゆっくり答えた。
「それに、やつはヴォルデモートの命令で動いてる。僕が言ったとおりだ!」
「んーん……二人のうちどちらかが、ヴォルデモートの名前を口にした?」
ハリーは思い出そうとして顔をしかめた。
「わからない……スネイプは『君の主君しゅくん』とはっきり言ったし、ほかに誰だれがいる?」
「わからないわ」ハーマイオニーが唇くちびるを噛かんだ。
「マルフォイの父親はどうかしら?」
ハーマイオニーは、何か考え込むように、部屋の向こうをじっと見つめた。ラベンダーがロンをくすぐっているのにも気づかない様子だ。