「高学年になると、リドルは献けん身しん的てきな友人を取り巻きにしはじめた。ほかに言いようがないので、友人と呼ぶが、すでにわしが言うたように、リドルがその者たちの誰だれに対しても、何らの友情も感じていなかったことは疑いもない。この集団は、ホグワーツ内で、一種の暗い魅み力りょくを持っておった。雑多ざったな寄せ集めで、保ほ護ごを求める弱い者、栄光えいこうのおこぼれに与あずかりたい野心やしん家か、自分たちより洗練せんれんされた残酷ざんこくさを見せてくれるリーダーに惹かれた乱暴者等々。つまり、『死し喰くい人びと』の走りのような者たちじゃった。事実、その何人かは、ホグワーツを卒業したあと、最初の『死喰い人』となった」
「リドルに厳げん重じゅうに管理され、その者たちの悪あく行ぎょうは、おおっぴらに明るみに出ることはなかった。しかし、その七年の間に、ホグワーツで多くの不快な事件が起こったことはわかっておる。事件とその者たちとの関係が、満足に立りっ証しょうされたことは一度もない。もっとも深刻しんこくな事件は、言うまでもなく『秘ひ密みつの部へ屋や』が開かれたことで、その結果女子生徒が一人死んだ。きみも知ってのとおり、ハグリッドが濡ぬれ衣ぎぬを着せられた」
「ホグワーツでのリドルに関する記憶じゃが、多くを集めることはできなんだ」
ダンブルドアは「憂うれいの篩ふるい」に萎なえた手を置きながら言った。
「その当時のリドルを知る者で、リドルの話をしようとする者はほとんどおらぬ。怖気おじけづいておるのじゃ。わしが知りえた事柄ことがらは、リドルがホグワーツを去ってから集めたものじゃ。なんとか口を割らせることができそうな、数少ない何人かを見つけ出したり、古い記録を捜さがし求めたり、マグルや魔法使いの証しょう人にんに質問したりして、だいぶ骨を折って知りえたことじゃ」
「わしが説得せっとくして話させた者たちは、リドルが両親のことにこだわっていたと語った。もちろん、これは理解できることじゃ。孤こ児じ院いんで育った者が、そこに来ることになった経緯けいいを知りたがったのは当然じゃ。トム・リドル・シニアの痕跡こんせきはないかと、トロフィー室に置かれた盾たてや、学校の古い監かん督とく生せいの記録、魔法史の本まで探したらしいが、徒労とろうに終わった。父親がホグワーツに一度も足を踏ふみ入れてはいない事実を、リドルはついに受け入れざるをえなくなった。わしの考えでは、リドルはその時点で自分の名前を永久に捨て、ヴォルデモート卿きょうと名乗り、それまで軽蔑けいべつしていた母親の家族を調べはじめたのであろう――憶おぼえておろうが、人間の恥はずべき弱みである『死』に屈くっした女が魔女であるはずがないと、リドルがそう考えていた女性のことじゃ」
「リドルには、『マールヴォロ』という名前しかヒントはなかった。孤こ児じ院いんの関係者から、母はは方かたの父親の名前だと聞かされていた名じゃ。魔法族の家系かけいに関する古い本をつぶさに調べ、ついにリドルは、スリザリンの末裔まつえいが生き残っていることを突き止めた。十六歳の夏のことじゃ。リドルは毎年夏に戻もどっていた孤児院を抜け出し、ゴーント家の親戚しんせきを探しに出かけた。そして、さあ、ハリー、立つのじゃ……」
ダンブルドアも立ち上がった。その手に再び、渦巻うずまく乳にゅう白はく色しょくの記憶が詰まった小さなクリスタルの瓶びんがあるのが見えた。