「マールヴォロはどこだ?」リドルが聞いた。
「死んだ」男が答えた。「何年も前に死んだんだろうが?」
リドルが顔をしかめた。
「それじゃ、おまえは誰だれだ?」
「俺おれはモーフィンだ、そうじゃねえのか?」
「マールヴォロの息子か?」
「そーだともよ。それで……」
モーフィンは汚れた顔から髪かみを押しのけ、リドルをよく見ようとした。その右手に、マールヴォロの黒い石の指輪ゆびわをはめているのを、ハリーは見た。
「おめえがあのマグルかと思った」
モーフィンが呟つぶやくように言った。
「おめえはあのマグルにそーっくりだ」
「どのマグルだ?」リドルが鋭く聞いた。
「俺の妹が惚ほれたマグルよ。向こうのでっかい屋敷やしきに住んでるマグルよ」
モーフィンはそう言うなり、突然リドルの前に唾つばを吐はいた。
「おめえはあいつにそっくりだ。リドルに。しかし、あいつはもう、もっと年を取ったはずだろーが? おめえよりもっと年取ってらあな。考えてみりゃ……」
モーフィンは意識が薄うすれかけ、テーブルの縁ふちをつかんでもたれかかったままよろめいた。
「あいつは戻もどってきた、うん」モーフィンは呆ほうけたように言った。
ヴォルデモートは、取るべき手段を見極みきわめるかのように、モーフィンをじっと見ていた。そしてモーフィンにわずかに近寄り、聞き返した。
「リドルが戻ってきた?」
「ふん、あいつは妹を捨すてた。いい気味だ。腐くされ野郎やろうと結婚しやがったからよ!」
モーフィンはまた唾を吐いた。
「盗みやがったんだ。いいか、逃げやがる前に! ロケットはどこにやった? え? スリザリンのロケットはどこだ?」
ヴォルデモートは答えなかった。モーフィンは自分で自分の怒りを煽あおり立てていた。小こ刀がたなを振り回し、モーフィンが叫さけんだ。
「泥を塗ぬりやがった。そーだとも、あのアマ! そんで、おめえは誰だ? ここに来てそんなことを聞きやがるのは誰だ? おしめえだ、そーだ……おしめえだ……」
モーフィンは少しよろめきながら顔を逸そらした。ヴォルデモートが一歩近づいた。そのとたん、あたりが不自然に暗くなった。ヴォルデモートのランプが消え、モーフィンの蝋燭ろうそくも、何もかもが消えた……。
ダンブルドアの指がハリーの腕をしっかりつかみ、二人は上昇して現在に戻もどった。ダンブルドアの部屋の柔やわらかな金色の灯あかりが、まっ暗くら闇やみを見たあとのハリーの目に眩まぶしかった。