「モーフィンは自分がやったのではないと、一度も気づかなかったのですか?」
「一度も」ダンブルドアが言った。
「いまわしが言うたように、自慢じまんげに詳くわしい自白じはくをしたのじゃ」
「でも、いま見た本当の記憶は、ずっと持ち続けていた!」
「そうじゃ。しかし、その記憶をうまく取り出すには、相当な『開かい心しん術じゅつ』の技わざを使用せねばならなかったのじゃ」
ダンブルドアが言った。
「それに、すでに犯行はんこうを自じ供きょうしているのに、モーフィンの心をそれ以上探りたいなどと思う者がおるじゃろうか? しかし、わしは、モーフィンが死ぬ何週間か前に、あの者に面会することができた。わしはそのころ、ヴォルデモートに関して、できるだけ多くの過去を見つけ出そうとしておった。この記憶を引き出すのは容易よういではなかった。記憶を見たとき、わしはそれを理由にモーフィンをアズカバンから釈しゃく放ほうするように働きかけた。しかし、魔法省が決定を下す前に、モーフィンは死んでしもうたのじゃ」
「でも、すべてはヴォルデモートがモーフィンに仕し掛かけたことだと、魔法省はどうして気づかなかったんですか?」
ハリーは憤慨ふんがいして聞いた。
「ヴォルデモートはそのとき未成年だった。魔法省は、未成年が魔法を使うと探知たんちできるはずだ!」
「そのとおりじゃよ――魔法は探知できる。しかし、実じっ行こう犯はんが誰だれかはわからぬ。浮ふ遊ゆう術じゅつのことで、きみが魔法省に責せめられたのを憶おぼえておろうが、あれは実は――」
「ドビーだ」
ハリーが唸うなった。あの不当さには、いまだに腹が立った。
「それじゃ、未成年でも、大人の魔法使いがいる家で魔法を使ったら、魔法省にはわからないのですか?」
「たしかに魔法省は、魔法を行使こうしした人間を特定することはできぬ」
ハリーの大だい憤ふん慨がいした顔を見て微笑ほほえみながら、ダンブルドアが言った。
「魔法省としては、魔法使いの家庭内では、親が子供を従わせるのに任まかせるわけじゃ」
「そんなの、いい加減かげんだ」ハリーが噛かみついた。
「こんなことが起こったのに! モーフィンにこんなことが起こったのに!」
「わしもそう思う」ダンブルドアが言った。
「モーフィンがどのような者であれ、あのような死に方をしたのは酷こくじゃった。犯おかしもせぬ殺人の責せめを負うとは。しかし、もう時間も遅い。別れる前に、もう一つの記憶を見てほしい……」
ダンブルドアはポケットからもう一本クリスタルの薬くすり瓶びんを取り出した。ハリーは、これこそダンブルドアが収しゅう集しゅうした中でいちばん重要な記憶だと言ったことを思い出し、すぐに口をつぐんだ。こんどの中身は、まるで少し凝ぎょう結けつしているかのように、なかなか「憂うれいの篩ふるい」に入っていかなかった。記憶も腐くさることがあるのだろうか?
「この記憶は長くはかからない」薬瓶がやっと空からになったとき、ダンブルドアが言った。
「あっという間に戻もどってくることになろう。もう一度、『憂いの篩』へ、いざ……」
そして再びハリーは、銀色の表面から下へと落ちていき、一人の男のまん前に着地した。誰なのかはすぐにわかった。
哈利再次感到掉进了那银色的表层,这次正落在一个人面前,他立刻认了出来。