ハリーが二度とスラグホーンに質問しなかったので、魔ま法ほう薬やくの先生は、いつものようにハリーをかわいがる態度に戻もどり、その問題は忘れたかのようだった。スラグホーンが次に小パーティを開くときは、たとえクィディッチの練習予定を変えてでも逃すまいと決心し、ハリーは招しょう待たいされるのを待った。残念ながら、招しょう待たい状じょうは来なかった。ハリーは、ハーマイオニーやジニーにも確かめたが、どちらも招待状を受け取っていなかったし、二人の知るかぎり、ほかに誰だれも受け取った者はいなかった。スラグホーンは見かけより忘れっぽくないのかもしれないし、再び質問する機会を絶対に与えまいとしているのではないか、とハリーは考えざるをえなかった。
一方、ホグワーツ図書室は、ハーマイオニーの記憶にあるかぎりはじめて答えを出してくれなかった。それがあまりにもショックで、ハーマイオニーは、ハリーがベゾアール石でズルをしたと憤ふん慨がいしていたことさえ忘れてしまった。
「ホークラックスが何をする物か、ひとっつも説明が見当たらないの!」
ハーマイオニーがハリーに言った。
「ただの一つもよ! 禁書きんしょの棚たなも全部見たし、身の毛もよだつ魔法薬の煎せんじ方かたが書いてある、ゾッとする本も見たわ――何にもないのよ! 見つけたのはこれだけ。『最もっとも邪悪じゃあくなる魔ま術じゅつ』の序文じょぶんよ――読むわね――『ホークラックス、魔法の中で最も邪悪なる発明なり。我らはそを語りもせず、説ときもせぬ』……それなら、どうしてわざわざ書くの?」
ハーマイオニーはもどかしそうに言いながら、古こ色しょく蒼そう然ぜんとした本を乱暴らんぼうに閉じた。本が幽霊ゆうれいの出てきそうな泣き声を上げた。
「お黙だまり」
ハーマイオニーはぴしゃりと言って、本を元のカバンに詰め込んだ。