二月になり、学校の周まわりの雪が溶とけ出して、冷たく陰気いんきでじめじめした季節になった。どんよりとした灰はい紫むらさきの雲が城の上に低く垂たれ込め、間断かんだんなく降ふる冷たい雨で、芝生しばふは滑すべりやすく泥んこだった。その結果、六年生の「姿すがた現あらわし」第一回練習は、校庭でなく大おお広ひろ間まで行われることになった。通常の授じゅ業ぎょうとかち合わないように、練習時間は土曜日の朝に予定された。
ハリーとハーマイオニーが大広間に来てみると(ロンはラベンダーと一いっ緒しょに来ていた)、長テーブルがなくなっていた。高窓たかまどに雨が激はげしく打ちつけ、魔法のかかった天井は暗い渦うずを巻いていた。生徒たちは、各かく寮りょうの寮りょう監かんであるマクゴナガル、スネイプ、フリットウィック、スプラウトの諸しょ先生方と、魔法省から派遣はけんされた「姿現わし」の指し導どう官かんと思われる、小柄こがらな魔法使いの前に集まった。指導官は、奇き妙みょうに色味のない睫毛まつげに霞かすみのような髪かみで、一陣いちじんの風にも吹き飛ばされてしまいそうな実在感のない雰ふん囲い気きだった。しょっちゅう消えたり現れたりするから、何かしらん実体がなくなってしまったのだろうか、こういう儚はかなげな体型たいけいが、姿を消したい人には理想的なのだろうか、とハリーは考えた。
「みなさん、おはよう」
生徒が全員集まり、寮監が静せい粛しゅくにと呼びかけたあと、魔法省の指導官が挨あい拶さつした。
「私はウィルキー・トワイクロスです。これから十二週間、魔法省『姿現わし』指導官を務つとめます。その期間中、みなさんが『姿現わし』の試験に受かるように訓練するつもりです――」
「マルフォイ、静かにお聞きなさい!」マクゴナガル先生が叱しかりつけた。
みんながマルフォイを振り返った。マルフォイは鈍にぶいピンク色に頬ほおを染そめ、怒り狂った顔でdiv class="title">