「――それまでには、みなさんの多くが、試験を受けることができる年齢ねんれいになっているでしょう」
トワイクロスは何事もなかったかのように話し続けた。
「知ってのとおり、ホグワーツ内では通常『姿現わし』も『姿くらまし』もできません。校長先生が、みなさんの練習のために、この大広間にかぎって、一時間だけ呪縛じゅばくを解きました。念ねんを押しますが、この大広間の外では『姿現わし』はできませんし、試したりするのも賢明けんめいとは言えません」
「それではみなさん、前の人との間を一・五メートル空けて、位置に着いてください」
互いに離れたりぶつかったり、自分の空間から出ろと要求したりで、かなり押し合いへし合いがあった。寮りょう監かんが生徒の間を回って、位置につかせたり、言い争いをやめさせたりした。
「ハリー、どこにいくの?」ハーマイオニーが見咎みとがめた。
ハリーは、それには答えず、混雑の中をすばやく縫ぬって歩いていった。全員がいちばん前に出たがっているレイブンクロー生を位置に着かせようと、キーキー声を出しているフリットウィック先生のそばを通り過ぎ、ハッフルパフ生を追い立てて並ばせているスプラウト先生を通り越し、アーニー・マクミランを避さけて、最後に群れのいちばん後ろ、マルフォイの真後ろに首尾しゅびよく場所を占めた。マルフォイは部屋中の騒ぎに乗じて、反はん抗こう的てきな顔をして一・五メートル離れたところに立っているクラッブと、口論こうろんを続けていた。
「いいか、あとどのくらいかかるかわからないんだ!」
すぐ後ろにハリーがいることには気づかず、マルフォイが投げつけるように言った。
「考えていたより長くかかっている」
クラッブが口を開きかけたが、マルフォイはクラッブの言おうとしていることを読んだようだった。
「いいか、僕が何をしていようと、クラッブ、おまえには関係ない。おまえもゴイルも、言われたとおりにして、見張りだけやっていろ!」
「友達に見張りを頼むときは、僕なら自分の目的を話すけどな」
ハリーは、マルフォイだけに聞こえる程度の声で言った。
マルフォイは、さっと杖つえに手をかけながら、くるりと後ろ向きになったが、ちょうどそのとき、寮監の四人が「静かに!」と大声を出し、部屋中が再び静かになった。マルフォイはゆっくりと正面に向き直った。