二回目も一回目よりましとは言えず、三回目も相変わらずだめだった。四回目になってやっと一ひと騒そう動どう起こった。恐ろしい苦痛の悲鳴が上がり、みんながゾッとして声のほうを見ると、ハッフルパフのスーザン・ボーンズが、一・五メートル離れた出発地点に左足を残したまま、輪の中でグラグラ揺ゆれていた。
寮りょう監かんたちがスーザンを包囲ほういし、バンバンいう音と紫むらさきの煙が上がり、それが消えたあとには、左足と再び合体したスーザンが、怯おびえきった顔で泣きじゃくっていた。
「『ばらけ』とは、体のあちこちが分離ぶんりすることで」
ウィルキー・トワイクロスが平気な顔で言った。
「心が十分に『どうしても』と決意していないときに起こります。継けい続ぞく的てきに『どこへ』に集中しなければなりません。そして、慌あわてず、しかし慎重に『どういう意図で』を忘れずに動くこと……そうすれば」
トワイクロスは前に進み出て両腕を伸ばし、その場で優雅ゆうがに回転してローブの渦うずの中に消えたかと思うと、大おお広ひろ間まの後ろに再び姿を現した。
「三つの『Dディー』を忘れないように」トワイクロスが言った。
「ではもう一度……いち――にー――さん――」
しかし、一時間経っても、スーザンの「ばらけ」以上におもしろい事件はなかった。トワイクロスは別に落胆らくたんした様子もない。首のところでマントの紐ひもを結びながら、ただこう言った。
「では、みなさん、次の土曜日に。忘れないでくださいよ、『どこへ、どうしても、どういう意い図とで』」
そう言うなりトワイクロスが杖つえを一振りすると、輪っかが全部消えた。トワイクロスはマクゴナガル先生に付つき添そわれて大広間を出ていった。生徒たちは玄げん関かんホールへと移動し、たちまちおしゃべりが始まった。
「どうだった?」
ロンが急いでハリーのほうへやって来て聞いた。
「最後にやったとき、なんだか感じたみたいな気がするな――両足がじんじんするみたいな」
「スニーカーが小さすぎるんじゃないの、ウォン‐ウォン」
背後で声がして、ハーマイオニーが冷ややかな笑いを浮かべながら、つんけんと二人を追い越していった。
「僕は何にも感じなかった」ハリーは茶々ちゃちゃが入らなかったかのように言った。
「だけど、いまはそんなことどうでもいい――」
「どういうことだ? どうでもいいって……『姿すがた現あらわし』を覚えたくないのか?」
ロンが信じられないという顔をした。
「ほんとにどうでもいいんだ。僕は飛ぶほうが好きだ」
ハリーは振り返ってマルフォイがどこにいるかを確かめ、玄関ホールに出てから足を早めた。
「頼む、急いでくれ。僕、やりたいことがあるんだ……」