「よし」
ハリーはひとり言を言いながら地図をベッドに持ち帰り、ちょうどそのときハリーのベッドの足側を通り過ぎていたネビルに聞こえないように、杖つえでそっと叩たたきながら呪じゅ文もんを呟つぶやいた。
「われ、ここに誓ちかう。われ、よからぬことを企たくらむ者なり」
「ハリー、いいぞ!」
ロンは、ハリーが贈おくった真新しいクィディッチ・キーパーのグローブを振りながら、興こう奮ふんしていた。
「そりゃよかった」
ハリーは、マルフォイを探してスリザリン寮りょうを克明こくめいに見ていたので、上の空の返事をした。
「おい……やつはベッドにいないみたいだぞ……」
ロンはプレゼントの包みを開けるのに夢中で、答えなかった。ときどきうれしそうな声を上げていた。
「今年はまったく大だい収しゅう穫かくだ!」
ロンは、重そうな金時計を掲かかげながら大声で言った。時計は縁ふちに奇き妙みょうな記号がついていて、針の代わりに小さな星が動いていた。
「ほら、パパとママからの贈り物を見たか? おっどろきー、来年もう一回成人になろうかな……」
「すごいな」
ハリーはいっそう丹念たんねんに地図を調べながらロンの時計をちらりと見て、気のない相槌あいづちを打った。マルフォイはどこなんだ? 大おお広ひろ間まのスリザリンのテーブルで朝食を食べている様子もない……研けん究きゅう室しつに座っているスネイプの近くにも見当たらない……どのトイレにも、医い務む室しつにもいない……。
「一つ食うか?」
大おお鍋なべチョコレートの箱を差さし出しながら、ロンがモグモグ言った。
「いいや」ハリーは目を上げた。「マルフォイがまた消えた!」
「そんなはずない」
ロンはベッドを滑すべり降りて服を着ながら、二つ目の大鍋チョコを口に押し込んでいた。
「さあ、急がないと、空すきっ腹ぱらで『姿すがた現あらわし』する羽目になるぞ……もっとも、そのほうが簡単かも……」
ロンは、大鍋チョコレートの箱を思し案あん顔がおで見たが、肩をすくめて三個目を食べた。
ハリーは、杖で地図を叩たたき、まだ完了していなかったのに「いたずら完了」と唱となえた。それから服を着ながら、必死で考えた。マルフォイがときどき姿を消すことには、必ず何か説明がつくはずだ。しかし、ハリーにはさっぱり思いつかない。いちばんいいのはマルフォイのあとを追つけることだが、「透とう明めいマント」があるにせよ、これは現実的な案ではない。授じゅ業ぎょうはあるし、クィディッチの練習やら宿題やら「姿現わし」の練習まである。一日中学校内でマルフォイを追つけ回していたら、どうしたってハリーの欠席が問もん題だい視しされてしまう。
「行こうか?」ハリーがロンに声をかけた。
寮りょうのドアまで半分ほど歩いたところで、ハリーは、ロンがまだ動いていないのに気づいた。ベッドの柱に寄より掛かかり、奇き妙みょうにぼけっとした表情で、雨の打ちつける窓を眺ながめていた。