「信じられねえ」
ロンをじっと見下ろして、でっかいボサボサ頭を振りながら、ハグリッドがかすれた声で言った。
「まったく信じられねえ……ロンの寝顔を見てみろ……ロンを傷つけようなんてやつは、いるはずがねえだろうが? あ?」
「いまそれを話していたところさ」ハリーが言った。「わからないんだよ」
「グリフィンドールのクィディッチ・チームに恨うらみを持つやつがいるんじゃねえのか?」
ハグリッドが心配そうに言った。
「最初はケイティ、こんどはロンだ……」
「クィディッチ・チームを、殺やっちまおうなんてやつはいないだろう」ジョージが言った。
「ウッドなら別だ。やれるもんならスリザリンのやつらを殺やっちまったかもな」
フレッドが納なっ得とくのいく意見を述べた。
「そうね、クィディッチだとは思わないけど、事件の間に何らかの関かん連れん性せいがあると思うわ」
ハーマイオニーが静かに言った。
「どうしてそうなる?」フレッドが聞いた。
「そう、一つには、両方とも致ち命めい的てきな事件のはずだったのに、そうはならなかった。もっとも、単に幸運だったにすぎないけど。もう一つには、毒もネックレスも、殺す予定の人物までたどり着かなかった。もちろん……」
ハーマイオニーは、考え込みながら言葉を続けた。
「そのことで、事件の陰かげにいるのが、ある意味ではより危険人物だということになるわ。だって、目的の犠ぎ牲せい者しゃにたどり着く前に、どんなにたくさんの人を殺すことになっても、犯人はんにんは気にしないみたいですもの」
この不吉な意見に誰だれも反応しないうちに、再びドアが開いて、ウィーズリー夫妻ふさいが急ぎ足で病びょう棟とうに入ってきた。さっき来たときには、ロンが完全に回かい復ふくすると知って安心すると、すぐにいなくなったのだが、こんどはウィーズリーおばさんが、ハリーを捕まえてしっかり抱きしめた。
「ダンブルドアが話してくれたわ。あなたがベゾアール石でロンを救ったって」
おばさんはすすり泣いた。
「ああ、ハリー。何てお礼を言ったらいいの? あなたはジニーを救ってくれたし、アーサーも……こんどはロンまでも……」
「そんなに……僕、別に……」ハリーはどぎまぎして呟つぶやくように言った。
「考えてみると、家族の半分が君のおかげで命拾いした」おじさんが声を詰まらせた。
「そうだ、ハリー、これだけは言える。ロンが、ホグワーツ特急で君と同じコンパートメントに座ろうと決めた日こそ、ウィーズリー一家にとって幸運な日だった」