ハリーは何と答えていいやら思いつかなかった。マダム・ポンフリーが、ロンのベッドの周まわりには最大六人だけだと、再度注意しに戻もどってきたときは、かえってほっとした。ハリーとハーマイオニーがすぐに立ち上がり、ハグリッドも二人と一いっ緒しょに出ることに決め、ロンの家族だけをあとに残した。
「ひでえ話だ」
三人で大だい理り石せきの階段に向かって廊下ろうかを歩きながら、ハグリッドが顎鬚あごひげに顔を埋うずめるようにして唸うなった。
「安全対たい策さくを新しくしたっちゅうても、子供たちはひどい目に遭あってるし……ダンブルドアは心配しんぺえで病気になりそうだ……あんまりおっしゃらねえが、俺おれにはわかる……」
「ハグリッド、ダンブルドアに何かお考えはないのかしら?」
ハーマイオニーがすがる思いで聞いた。
「何百っちゅうお考えがあるに違ちげえねえ。あんなに頭のええ方だ」
ハグリッドが揺ゆるがぬ自信を込めて言った。
「そんでも、ネックレスを贈ったやつは誰だれで、あの蜂はち蜜みつ酒しゅに毒を入れたのは誰だっちゅうことがおわかりになんねえ。わかってたら、やつらはもう捕まっとるはずだろうが? 俺おれが心配しんぺえしとるのはな――」
ハグリッドは、声を落としてちらりと後ろを振り返った(ハリーは、ピーブズがいないかどうか、念ねんのため天井もチェックした)。
「子供たちが襲おそわれてるとなれば、ホグワーツがいつまで続けられるかっちゅうことだ。またしても『秘ひ密みつの部へ屋や』の繰くり返しだろうが? パニック状じょう態たいになる。親たちが学校から子供を連れ帰る。そうなりゃ、ほれ、次は学校の理り事じ会かいだ……」
長い髪かみの女性のゴーストがのんびりと漂ただよっていったので、ハグリッドはいったん言葉を切ってから、またかすれ声で囁ささやきはじめた。
「……理事会じゃあ、学校を永久閉鎖へいさする話をするに決まっちょる」
「まさか?」ハーマイオニーが心配そうに言った。
「あいつらの見方で物を見にゃあ」ハグリッドが重苦しく言った。
「そりゃあ、ホグワーツに子供を預あずけるっちゅうのは、いつでもちいとは危険を伴う。そうだろうが? 何百人っちゅう未成年の魔法使いが一いっ緒しょにいりゃあ、事故もあるっちゅうもんだ。だけんど、殺さつ人じん未み遂すいっちゅうのは、話が違う。そんで、ダンブルドアが立腹りっぷくなさるのも無理はねえ。あのスネ――」
ハグリッドは、はたと足を止めた。モジャモジャの黒髯くろひげから上のほうしか見えない顔に、いつもの「しまった」という表情が浮かんだ。