「えっ?」ハリーがすばやく突っ込んだ。「ダンブルドアがスネイプに腹を立てたって?」
「俺はそんなこと言っとらん」
そう言ったものの、ハグリッドの慌あわてふためいた顔のほうがよっぽど雄弁ゆうべんだった。
「こんな時間か。もう真夜中だ。俺は――」
「ハグリッド、ダンブルドアはどうしてスネイプを怒ったの?」ハリーは大声を出した。
「シーッ!」
ハグリッドは緊きん張ちょうしているようでもあり、怒っているようでもあった。
「そういうことを大声で言うもンでねえ、ハリー。俺をクビにしてぇのか? そりゃあ、そんなことはどうでもええんだろう。もう俺の『飼し育いく学がく』の授じゅ業ぎょうを取ってねえんだし――」
「そんなことを言って、僕に遠えん慮りょさせようとしたってむだだ!」ハリーが語ご調ちょうを強めた。
「スネイプは何をしたんだ?」
「知らねえんだ、ハリー。俺は何にも聞くべきじゃあなかった! 俺は――まあ、いつだったか、夜に俺が森から出てきたら、二人で話しとるのが聞こえた――まあ、議論ぎろんしちょった。俺のほうに気を引きたくはなかったんで、こそっと歩いて、何も聞かんようにしたんだ。だけんど、あれは――まあ、議論ぎろんが熱くなっとって、聞こえねえようにするのは難むずかしかったんでな」
「それで?」ハリーが促うながした。ハグリッドは巨大な足をもじもじさせていた。
「まあ――俺おれが聞こえっちまったのは、スネイプが言ってたことで、ダンブルドアは何でもかんでも当然のように考えとるが、自分は――スネイプのことだがな――もうそういうこたぁやりたくねえと――」
「何をだって?」
「ハリー、俺は知らねえ。スネイプはちいと働かされすぎちょると感じてるみてえだった。それだけだ――とにかく、ダンブルドアはスネイプにはっきり言いなすった。スネイプがやるって承しょう知ちしたんだから、それ以上何も言うなってな。ずいぶんときつく言いなすった。それからダンブルドアは、スネイプが自分の寮りょうのスリザリンを調査するっちゅうことについて、何か言いなすった。まあ、そいつは何も変なこっちゃねえ!」
ハリーとハーマイオニーが意味ありげに目配めくばせし合ったので、ハグリッドが慌あわててつけ加えた。
「寮りょう監かんは全員、ネックレス事件を調査しろって言われちょるし――」
「ああ、だけど、ダンブルドアはほかの寮監と口論こうろんはしてないだろう?」ハリーが言った。
「ええか」
ハグリッドは、気まずそうに石弓を両手でねじった。ボキッと大きな音がして、石弓が二つに折れた。
「スネイプのことっちゅうと、ハリー、おまえさんがどうなるか知っちょる。だから、いまのことを、変に勘かんぐってほしくねえんだ」