それじゃ、ダンブルドアはスネイプと口論こうろんしたのか。僕にはああ言ったのに、スネイプを完全に信用していると主張したのに、ダンブルドアはスネイプに対して腹を立てたんだ……スネイプがスリザリン生を十分に調べなかったと考えたからだろうか……それとも、たった一人、マルフォイを十分調べなかったからなのか?
ダンブルドアが、ハリーの疑惑ぎわくは取るに足らないというふりをしたのは、ハリーが自分でこの件を解決かいけつしようなどと、愚おろかなことをしてほしくないと考えたからなのだろうか? それはありうることだ。もしかしたら、ダンブルドアの授じゅ業ぎょうや、スラグホーンの記憶を聞き出すこと以外は、ほかにいっさい気を取られてほしくなかったのかもしれない。たぶんダンブルドアは、教員に対する自分の疑念ぎねんを、十六歳の若者に打ち明けるのは正しいことではないと考えたのだろう……。
「ここにいたのか、ポッター!」
ハリーは度肝どぎもを抜かれて飛び上がり、杖つえを構かまえた。談話室には絶対に誰もいないと思い込んでいたので、離れた椅い子すから突然ヌーッと立ち上がった影には不ふ意いを食らわされた。よく見ると、コーマック・マクラーゲンだった。
「君が帰ってくるのを待っていた」
マクラーゲンは、ハリーの抜いた杖を無視して言った。
「眠り込んじまったらしい。いいか、ウィーズリーが病びょう棟とうに運び込まれるのを見ていたんだ。来週の試合ができる状じょう態たいではないようだ」
しばらくしてやっと、ハリーは、マクラーゲンが何の話をしているかがわかった。
「ああ……そう……クィディッチか」
ハリーはジーンズのベルトに杖を戻もどし、片手で物憂ものうげに髪かみを掻かいた。
「うん……だめかもしれないな」
「そうか、それなら、僕がキーパーってことになるな?」マクラーゲンが言った。
「ああ」ハリーが言った。
「うん、そうだろうな……」
ハリーは反論を思いつかなかった。何と言っても、マクラーゲンが、選抜せんばつでは二位だったのだ。
「よーし」マクラーゲンが満足げに言った。「それで、練習はいつだ?」
「え? ああ……明日の夕方だ」
「よし。いいか、ポッター、その前に話がある。戦せん略りゃくについて考えがある。君の役に立つと思うんだ」
「わかった」ハリーは気のない返事をした。
「まあ、それなら、明日あした聞くよ。いまはかなり疲れてるんだ……またな」