ハリーを見つけると、マルフォイは、はたと立ち止まったが、おもしろくもなさそうに短く笑うと、そのまま歩き続けた。
「どこに行くんだ?」ハリーが詰問きつもんした。
「ああ、教えてさし上げますとも、ポッター。どこへ行こうと大きなお世話、じゃないからねえ」マルフォイがせせら笑った。
「急いだほうがいいんじゃないか。『選ばれしキャプテン』をみんなが待っているからな――『得点した男の子』――みんながこのごろは何て呼んでいるのか知らないがね」
女の子の一人が、取ってつけたようなクスクス笑いをした。ハリーがその子をじっと見ると、女の子は顔を赤らめた。マルフォイはハリーを押しのけるようにして通り過ぎた。笑った女の子とその友達も、そのあとをトコトコついて行き、三人とも角を曲がって見えなくなった。
ハリーはその場に根が生えたように佇たたずみ、三人の姿を見送った。何たることだ。試合までギリギリの時間しかないというそんなときに、マルフォイが空っぽの学校をこそこそ歩き回っている。マルフォイの企たくらみを暴あばくには、またとない最高の機会なのに。刻々こっこくと沈ちん黙もくの時が過ぎる間、ハリーはマルフォイの消えたあたりを見つめて、凍こおりついたように立ち尽くしていた。
「どこに行ってたの?」ハリーが更こう衣い室しつに飛び込むと、ジニーが問い詰めた。選手はもう全員着き替がえをすませて待機たいきしていた。ビーターのクートとピークスは、ぴりぴりしながら棍棒こんぼうで自分たちの脚あしを叩たたいていた。
「マルフォイに出会った」
ハリーは真紅しんくのユニフォームを頭からかぶりながら、そっとジニーに言った。
「それで?」
「それで、みんながここにいるのに、やつがガールフレンドを二人連れて、城にいるのはなぜなのか、知りたかった……」
「いまのいま、それが大事なことなの?」第19章 しもべ妖精の尾行 Elf Tails(11)