「難むずかしい天気だぞ!」
マクラーゲンがチームに向かって鼓こ舞ぶするように言った。
「クート、ピークス、太陽を背にして飛べ。敵てきに姿が見られないようにな――」
「マクラーゲン、キャプテンは僕だ。選手に指示するのはやめろ」ハリーが憤慨ふんがいした。
「ゴールポストのところに行ってろ!」
マクラーゲンが肩をそびやかして行ってしまったあとで、ハリーはクートとピークスに向き直った。
「必ず太陽を背にして飛べよ」ハリーはしかたなしに二人にそう言った。
ハリーはハッフルパフのキャプテンと握手あくしゅをすませ、マダム・フーチのホイッスルで地面を蹴けり、空に舞い上がった。ほかの選手たちよりずっと高く、スニッチを探して競技場の周囲を猛もうスピードで飛んだ。早くスニッチをつかめば、城に戻もどって「忍しのびの地ち図ず」を持ち出し、マルフォイが何をしているかを見つけ出す可能性があるかもしれない……。
「そして、クアッフルを手にしているのは、ハッフルパフのスミスです」
地上から、夢見心地の声が流れてきた。
「スミスは、もちろん、前回の解説者でした。そして、ジニー・ウィーズリーがスミスに向かって飛んでいきましたね。たぶん意い図と的てきだったと思うわ――そんなふうに見えたもン。スミスはグリフィンドールに、とっても失礼でした。対戦しているいまになって、それを後悔こうかいしていることでしょう――あら、見て、スミスがクアッフルを落としました。ジニーが奪うばいました。あたし、ジニーが好きよ。とても素敵すてきだもン……」
ハリーは目を見開いて解説者の演壇えんだんを見た。まさか、まともな神経しんけいの持ち主なら、ルーナ・ラブグッドを解説者に立てたりはしないだろう? しかし、こんな高いところからでも、紛まぎれもなく、あの濁にごり色のブロンドの長い髪かみ、バタービールのコルクのネックレス……ルーナの横で、この人選じんせんはまずかったと思っているかのように、当とう惑わく気ぎ味みの顔をしているのは、マクゴナガル先生だ。
「……でも、こんどは大きなハッフルパフ選手が、ジニーからクアッフルを取りました。何ていう名前だったかなあ、たしかビブルみたいな――ううん、バギンズかな――」
「キャッドワラダーです!」
ルーナの脇わきから、マクゴナガル先生が大声で言った。観かん衆しゅうは大笑いだ。
ハリーは目を凝こらしてスニッチを探したが、影も形もない。しばらくして、キャッドワラダーが得点した。マクラーゲンは、ジニーがクアッフルを奪うばわれたことを大声で批判ひはんしていて、自分の右耳のそばを大きな赤い球がかすめて飛んでいくのに気づかなかったのだ。