「マクラーゲン、自分のやるべきことに集中しろ。ほかの選手にかまうな!」
ハリーはくるりとキーパーのほうに向き直って怒ど鳴なった。
「君こそいい模範もはんを示せ!」マクラーゲンがまっ赤になって怒鳴り返した。
「さて、こんどはハリー・ポッターがキーパーと口論こうろんしています」
下で観戦かんせんしているハッフルパフ生やスリザリン生が、歓声かんせいを上げたり野や次じったりする中、ルーナがのどかに言った。
「それはハリー・ポッターがスニッチを見つける役には立たないと思うけど、でもきっと、賢かしこい策さく略りゃくなのかもね……」
ハリーはかんかんになって悪態あくたいをつきながら、向きを変えてまた競きょう技ぎ場じょうを回りはじめ、羽の生えた金色の球の姿を求めて空に目を走らせた。
ジニーとデメルザが、それぞれ一回ゴールを決め、下にいる赤と金色のサポーターが歓声を上げる機会を作った。それからキャッドワラダーがまた点を入れ、スコアはタイになったが、ルーナはそれに気づかないようだった。点数なんていう俗ぞくなことにはまったく関心がない様子で、観衆の注意を形のおもしろい雲に向けたり、ザカリアス・スミスがクアッフルをそれまで一分以上持っていられなかったのは、「負け犬病」とかいう病気を患わずらっている可能性があるという方向に持っていったりした。
「七〇対四〇、ハッフルパフのリード」
マクゴナガル先生が、ルーナのメガフォンに向かって大声を出した。
「もうそんなに?」ルーナが漠然ばくぜんと言った。
「あら、見て! グリフィンドールのキーパーが、ビーターの棍棒こんぼうを一本つかんでいます」
ハリーは空中でくるりと向きを変えた。たしかに、マクラーゲンが、どんな理由かはマクラーゲンのみぞ知るだが、ピークスの棍棒を取り上げ、突っ込んでくるキャッドワラダーに、どうやってブラッジャーを打ち込むかをやって見せているらしい。
「棍棒こんぼうを返してゴールポストに戻もどれ!」
ハリーがマクラーゲンに向かって突進とっしんしながら吠ほえるのと、マクラーゲンがブラッジャーに獰猛どうもうな一撃いちげきを加えるのとが同時だった。ばか当たりの一撃だった。
目が眩くらみ、激烈げきれつな痛み……閃光せんこう……遠くで悲鳴が聞こえる……長いトンネルを落ちていく感じ……。