申しわけなさが、チクチクと熱く、ハリーの頭のてっぺんから体中に広がった。ダンブルドアは声を荒らげなかった。怒っているようにも聞こえなかった。しかし、怒ど鳴なってもらったほうがむしろ楽だった。ダンブルドアのひんやりとした失望が、何よりも辛つらかった。
「先生」何とかしなければという気持で、ハリーが言った。
「気にしていなかったわけではありません。ただ、ほかの――ほかのことが……」
「ほかのことが気になっていた」ダンブルドアがハリーの言葉を引き取った。
「なるほど」
二人の間に、また沈ちん黙もくが流れた。ダンブルドアとの間でハリーが経験した中でも、いちばん気まずい沈黙だった。沈黙がいつまでも続くような気がした。ダンブルドアの頭の上に掛かかっているアーマンド・ディペットの肖しょう像ぞう画がから聞こえる軽い寝息が、ときどき沈黙を破るだけだった。ハリーは自分が奇き妙みょうに小さくなったような気がした。この部屋に入って以来、体が少し縮ちぢんだような感覚だった。
もうそれ以上は耐えられなくなり、ハリーが言った。
「ダンブルドア先生、申しわけありませんでした。もっと努力すべきでした……本当に大切なことでなければ、先生は僕に頼まなかっただろうと、気づくべきでした」
「わかってくれてありがとう、ハリー」ダンブルドアが静かに言った。
「それでは、これ以後、きみがこの課題かだいを最さい優先ゆうせんにすると思ってよいかな? あの記憶を手に入れなければ、次からは授業をする意味がなくなるじゃろう」
「僕、そのようにします。あの記憶を手に入れます」ハリーが真剣しんけんに言った。
「それでは、いまは、もうこのことを話題にすまい」
ダンブルドアはより和やわらいだ口調で言った。
「そして、前回の話の続きを進めることにしよう。どのあたりじゃったか、憶おぼえておるかの?」
「はい、先生」ハリーが即座そくざに答えた。
「ヴォルデモートが父親と祖そ父ふ母ぼを殺し、それをおじのモーフィンの仕業しわざに見せかけました。それからホグワーツに戻もどり、質問を……スラグホーン先生にホークラックスについて質問をしました」ハリーは恥はじ入って口ごもった。
「よろしい」ダンブルドアが言った。
「さて、憶えておると思うが、一連の授業の冒頭ぼうとうに、我々は推測すいそくや憶測おくそくの域いきに入り込むことになるじゃろうと言うたの?」
「はい、先生」