「……率そっ直ちょくに話そうぞ。互いにわかっていることじゃが、望んでもおらぬ仕事を求めるために、腹心ふくしんの部下を引き連れて、きみが今夜ここを訪れたのは、なぜなのじゃ?」
ヴォルデモートは冷ややかに、驚いた顔をした。
「わたくしが望まない仕事? とんでもない、ダンブルドア。わたしは強く望んでいます」
「ああ、きみはホグワーツに戻もどりたいと思っておるのじゃ。しかし、十八歳のときもいまも、きみは教えたいなどとは思っておらぬ。トム、何が狙ねらいじゃ? 一度ぐらい、正直に願い出てはどうじゃ?」
ヴォルデモートが鼻先はなさきで笑った。
「あなたがわたしに仕事をくださるつもりがないなら――」
「もちろん、そのつもりはない」ダンブルドアが言った。
「それに、わしが受け入れるという期待をきみが持ったとは、まったく考えられぬ。にもかかわらず、きみはやって来て、頼んだ。何か目的があるに違いない」
ヴォルデモートが立ち上がった。ますますトム・リドルの面影おもかげが消え、顔の隅々すみずみまで怒りで膨ふくれ上がっていた。
「それが最後の言葉なのか?」
「そうじゃ」ダンブルドアも立ち上がった。
「では、互いに何も言うことはない」
「いかにも、何もない」ダンブルドアの顔に、大きな悲しみが広がった。「きみの洋よう箪だん笥すを燃やして怖こわがらせたり、きみが犯おかした罪つみを償つぐなわせたりできた時代は、とうの昔になってしもうた。しかし、トム、わしはできることならそうしてやりたい……できることなら……」
一いっ瞬しゅん、ハリーは、叫さけんでも意味がないのに、危ないと叫びそうになった。ヴォルデモートの手が、ポケットの杖つえに向かってたしかにぴくりと動いたと思ったのだ。しかし、一瞬が過ぎ、ヴォルデモートは背を向けた。ドアが閉まり、ヴォルデモートは行ってしまった。