「『必要ひつようの部へ屋や』だ!」
ハリーは「上じょう級きゅう魔ま法ほう薬やく」の教科書で自分の額ひたいをバンと叩たたいた。ハーマイオニーとロンが、目を丸くしてハリーを見た。
「そこに姿をくらましていたんだ! そこでやっているんだ……何かをやってる! きっとそれで、地図から消えてしまったんだ――そう言えば、地図で『必要の部屋』を見たことがない!」
「忍びの者たちは、そんな部屋があることを知らなかったのかもな」ロンが言った。
「それが『必要の部屋』の魔法の一つなんだと思うわ」ハーマイオニーが言った。
「地図上に表示されないようにする必要があれば、部屋がそうするのよ」
「ドビー、うまく部屋に入って、マルフォイが何をしているか覗のぞけたかい?」
ハリーが急せき込んで聞いた。
「いいえ、ハリー・ポッター。それは不可能です」ドビーが言った。
「そんなことはない」ハリーが即座そくざに言った。
「マルフォイは、先学期、僕たちの本部に入ってきた。だから僕も入り込んで、あいつのことを探れる。大丈夫だ」
「だけど、ハリー、それはできないと思うわ」ハーマイオニーが考えながら言った。
「マルフォイは、私たちがあの部屋をどう使っていたかをちゃんと知っていた。そうでしょう? だって、あのおばかなマリエッタがベラベラしゃべったんだから。マルフォイには、あの部屋が『DディーAエイ』の本部になる必要があったから、部屋はその必要に応こたえたのよ。でも、あなたは、マルフォイが部屋に入っているときに、あの部屋が何の部屋になっているのかを知らない。だからあなたは、どういう部屋になれって願うことができないわ」
「なんとかなるさ」ハリーが事もなげに言った。
「ドビー、君はすばらしい仕事をしてくれたよ」
「クリーチャーもよくやったわ」
ハーマイオニーが優やさしく言ったが、クリーチャーは感謝かんしゃの表情を見せるどころか、大きな血走った眼めを逸そらせ、嗄しわがれ声で天井に話しかけた。
「『穢けがれた血』がクリーチャーに話しかけている。クリーチャーは聞こえないふりをする――」
「やめろ」ハリーが鋭く言った。
クリーチャーは最後にまた深々とお辞じ儀ぎをして、「姿くらまし」した。
「ドビー、君も帰って少し寝たほうがいいよ」
「ありがとうございます。ハリー・ポッター様!」
ドビーはうれしそうにキーキー言って、こちらも姿を消した。