ハリーは一時間のうちに考えられるかぎり、「僕はドラコ・マルフォイが部屋の中でやっていることを見る必要がある」の言い方を変えてやってみたが、最後には、ハーマイオニーの言うことが正しいかもしれないと、しぶしぶ認めざるをえなくなった。「部屋」は頑がんとしてハリーのために開いてはくれなかった。ハリーは「透とう明めいマント」を脱いでカバンにしまい、挫ざ折せつ感かんで苛いらつきながら、「闇やみの魔ま術じゅつに対する防ぼう衛えい術じゅつ」の授じゅ業ぎょうに向かった。
「また遅刻だぞ、ポッター」
ハリーが、蝋燭ろうそくの灯あかりに照らされた教室に、急いで入っていくと、スネイプが冷たく言った。
「グリフィンドール、十点減点げんてん」
ハリーはロンの隣となりの席にドサリと座りながら、スネイプを睨にらみつけた。クラスの半分はまだ立ったままで、学用品をそろえていた。ハリーがみんなより特に遅れたとは言えないはずだ。
「授業を始める前に、『吸きゅう魂こん鬼き』のレポートを出したまえ」
スネイプがぞんざいに杖つえを振ると、二十五本の羊よう皮ひ紙しの巻紙まきがみが宙ちゅうに舞まい上がり、スネイプの机の上に整然せいぜんと積つみ上がった。
「『服ふく従じゅうの呪じゅ文もん』への抵抗ていこうに関するレポートのくだらなさに、我わが輩はいは耐え忍ばねばならなかったが、今回のレポートはそれよりはましなものであることを、諸君しょくんのために望みたいものだ。さて、教科書を開いて、ページは――ミスター・フィネガン、何だ?」
「先生」シェーマスが言った。「質問があるのですが、『亡者もうじゃ』と『ゴースト』はどうやって見分けられますか? 実は『日刊にっかん予よ言げん者しゃ』に、『亡者』のことが出ていたものですから――」
「出ていない」スネイプがうんざりした声で言った。
「でも、先生、僕、聞きました。みんなが話しているのを――」
「ミスター・フィネガン、問題の記事を自分で読めば、『亡者』と呼ばれたものが、実はマンダンガス・フレッチャーという名の、小こ汚ぎたないこそ泥にすぎなかったことがわかるはずだ」
「スネイプとマンダンガスは味み方かた同どう士しじゃなかったのか?」
ハリーは、ロンとハーマイオニーに小声で言った。
「マンダンガスが逮捕たいほされても平気なのか――?」
「しかし、ポッターはこの件について、ひとくさり言うことがありそうだ」
スネイプは突とつ然ぜん教室の後ろを指差し、暗い目でハタとハリーを見み据すえた。
「ポッターに聞いてみることにしよう。『亡者』と『ゴースト』をどのようにして見分けるか」
クラス中がハリーを振り返った。ハリーは、スラグホーンを訪れた夜にダンブルドアが教えてくれたことを、慌あわてて思い出そうとした。