「また?」ハリーは痛めた足をそっと床に下ろした。
「ねえ――トンクスは、ダンブルドアがどこに出かけるのか、知らないだろうね?」
「知らない」トンクスが言った。
「何の用でダンブルドアに会いにきたの?」
「別に特別なことじゃないんだけど」
トンクスは、どうやら無意識にローブの袖そでを何度も摘つまみながら、言った。
「ただ、何が起こっているか、ダンブルドアなら知っているんじゃないかと思って……噂うわさを聞いたんだ……人が傷ついている……」
「うん、知ってる。新聞にいろいろ出ているし」ハリーが言った。
「小さい子が人を殺そうとしたとか――」
「『日刊にっかん予よ言げん者しゃ』は、ニュースが遅いことが多いんだ」
トンクスが言った。ハリーの言うことは聞いていないように見えた。
「騎き士し団だんの誰だれかから、最近手紙が来てないでしょうね?」
「騎士団にはもう、手紙をくれる人は誰だれもいない」ハリーが言った。
「シリウスはもう――」
ハリーは、トンクスの目が涙なみだで一杯なのを見た。
「ごめん」ハリーは当惑とうわくして呟つぶやいた。
「あの……僕もあの人がいなくて寂さびしいんだ……」
「えっ?」
トンクスは、ハリーの言ったことが聞こえなかったかのように、きょとんとした。
「じゃあ……またね、ハリー……」
トンクスは唐突とうとつに踵きびすを返し、廊下ろうかを戻もどっていった。残されたハリーは目を丸くして見送った。一、二分が経ち、ハリーは「透とう明めいマント」をかぶり直して、再び「必要の部屋」に入ろうと取り組みはじめたが、もう気が抜けてしまっていた。胃袋も空からっぽだったし、考えてみれば、ロンとハーマイオニーがまもなく昼食に戻ってくる。ハリーはついに諦あきらめ、廊下をマルフォイに明け渡した。おそらくマルフォイは、不安であと数時間はここから出られないだろう。いい気味だ。
ロンとハーマイオニーは大おお広ひろ間まにいた。早い昼食を、もう半分すませていた。
「できたよ――まあ、ちょっとね!」
ロンはハリーの姿を見つけると、興こう奮ふんして言った。
「マダム・パディフットの喫きっ茶さ店てんの外に『姿すがた現あらわし』するはずだったんだけど、ちょっと行きすぎて、スクリベンシャフト羽根ペン専せん門もん店てんの近くに出ちゃってさ。でも、とにかく動いた!」
「やったね」ハリーが言った。「君はどうだった? ハーマイオニー?」
「ああ、完璧かんぺきさ。当然」ハーマイオニーより先に、ロンが言った。
「完璧な3さんDディーだ。『どういう意い図とで』、『どっちらけ』、『どん底ぞこ』、だったかな、まあどうでもいいや――そのあと、みんなで『三本の箒ほうき』にちょっと飲みにいったんだけど、トワイクロスが、ハーマイオニーを褒ほめるの褒めないのって――そのうちきっと結婚の申し込みを――」