「これ、読んでよ」
ハリーはハーマイオニーに手紙を渡した。
「まあ、どうしましょう」
ハーマイオニーは急いで読んで、ロンに渡した。ロンは読みながら、だんだん「マジかよ」という顔になった。
「まともじゃない!」
ロンが憤慨ふんがいした。
「仲間の連中に、僕とハリーを食えって言ったやつだぜ! 勝手に食えって、そう言ったんだぜ! それなのにハグリッドは、こんどは僕たちが出かけていって、おっそろしい毛むくじゃら死体に涙を流せって言うのか!」
「それだけじゃないわ」ハーマイオニーが言った。
「夜に城を抜け出せって頼んでるのよ。安全対たい策さくが百万倍も強化されているし、私たちがつかまったら大問題になるのを知ってるはずなのに」
「前にも夜に訪たずねていったことがあるよ」ハリーが言った。
「ええ、でも、こういうことのためだった?」ハーマイオニーが言った。
「私たち、ハグリッドを助けるために危険を冒おかしてきたわ。でもどうせ――アラゴグはもう死んでるのよ。これがアラゴグを助けるためだったら――」
「――ますます行きたくないね」ロンがきっぱりと言った。
「ハーマイオニー、君はあいつに会ってない。いいかい、死んだことで、やつはずっとましになったはずだ」
ハリーは手紙を取り戻もどして、羊よう皮ひ紙し一杯に飛び散っているインクの染しみを見つめた。羊皮紙に大粒おおつぶの涙がポタポタこぼれたに違いない……。
「ハリー、まさか、行くつもりじゃないでしょうね」
ハーマイオニーが言った。
「そのために罰則ばっそくを受けるのはまったく意味がないわ」
ハリーはため息をついた。
「うん、わかってる」ハリーが言った。
「ハグリッドは、僕たち抜きで埋葬まいそうしなければならないだろうな」
「ええ、そうよ」
ハーマイオニーがほっとしたように言った。
「ねえ、魔ま法ほう薬やくの授じゅ業ぎょうは今日、ほとんどがらがらよ。私たちが全部試験に出てしまうから……そのときに、スラグホーンを少し懐かい柔じゅうしてごらんなさい!」
「五十七回目に、やっと幸運ありっていうわけ?」ハリーが苦々にがにがしげに言った。
「幸運――」
ロンが突然口走った。
「ハリー、それだ――幸運になれ!」
「何のことだい?」
「『幸運の液体』を使え!」
「ロン、それって――それよ!」
ハーマイオニーが、はっとしたように言った。
「もちろんそうだわ! どうして思いつかなかったのかしら?」
ハリーは目を見張って二人を見た。
「フェリックス・フェリシス? どうかな……僕、取っておいたんだけど……」
「何のために?」
ロンが信じられないという顔で問い詰めた。
「ハリー、スラグホーンの記憶ほど大切なものがほかにある?」
ハーマイオニーが問い質ただした。