「さーて、これはまた何ともすばらしい」
一時間半後に、スラグホーンがハリーの大おお鍋なべを覗のぞき、太陽のように輝かがやかしい黄こ金がね色いろの薬を見下ろして、手を叩たたいた。
「陶酔薬、そうだね? それにこの香りは何だ? ウムムム……ハッカの葉を入れたね? 正せい統とう派はではないが、ハリー、何たる閃ひらめきだ。もちろん、ハッカは、たまに起こる副作用を相そう殺さいする働きがある。唄うたを歌いまくったり、やたらと人の鼻を摘つまんだりする副作用だがね……いったいどこからそんなことを思いつくのやら、さっぱりわからんね……もしや――」
ハリーはプリンスの教科書を、足でカバンの奥に押し込んだ。
「――母親の遺い伝でん子しが、君に現れたのだろう!」
「あ……ええ、たぶん」ハリーはほっとした。
アーニーは、かなり不ふ機き嫌げんだった。こんどこそハリーよりうまくやろうとして、無謀むぼうにも独自の魔法薬を創作そうさくしようとしたのだが、薬はチーズのように固まり、鍋底なべそこで紫のダンゴ状になっていた。マルフォイはふて腐くされた顔で、もう荷物を片付けはじめていた。スラグホーンは、マルフォイの「しゃっくり咳せき薬ぐすり」を「まあまあ」と評ひょう価かしただけだった。
終しゅう業ぎょうベルが鳴り、アーニーもマルフォイもすぐに出ていった。
「先生」
ハリーが切り出したが、スラグホーンはすぐに振り返って教室をざっと眺ながめた。自分とハリー以外に誰だれもいないと見て取ると、スラグホーンは大急ぎで立ち去ろうとした。
「先生――先生、試してみませんか? 僕の――」
ハリーは必死になって呼びかけた。
しかし、スラグホーンは行ってしまった。がっかりして、ハリーは鍋なべを空けて荷物をまとめ、足取りも重く地ち下か牢ろう教室を出て、談だん話わ室しつまで戻もどった。
ロンとハーマイオニーは、午後の遅い時間に帰ってきた。
「ハリー!」
ハーマイオニーが肖しょう像ぞう画がの穴を抜けながら呼びかけた。
「ハリー、合格したわ!」
「よかったね!」ハリーが言った。「ロンは?」
「ロンは――ロンはおしいとこで落ちたわ」
ハーマイオニーが小声で言った。陰気いんきくさい顔のロンが、がっくり肩を落として穴から出てきたところだった。
「ほんとに運が悪かったわ。些細ささいなことなのに。試験官が、ロンの片方の眉まゆが半分だけ置き去りになっていることに気づいちゃったの……スラグホーンはどうだった?」
「アウトさ」
ハリーがそう答えたとき、ロンがやって来た。
「運が悪かったな、おい。だけど、次は合格だよ――一いっ緒しょに受験できる」
「ああ、そうだな」ロンが不機嫌に言った。「だけど、眉半分だぜ! 目くじら立てるほどのことか?」
「そうよね」ハーマイオニーが慰なぐさめるように言った。「ほんとに厳きびしすぎるわ……」
夕食の時間のほとんどを、三人は「姿すがた現あらわし」の試験官を、こてんぱんにこき下ろすことに費やした。談話室に戻りはじめるころまでには、ロンはわずかに元気を取り戻し、こんどは三人で、まだ解決していないスラグホーンの記憶の問題について話しはじめた。
「それじゃ、ハリー――フェリックス・フェリシスを使うのか、使わないのか?」
ロンが迫せまった。
「うん、使ったほうがよさそうだ」
ハリーが言った。
「全部使う必要はないと思う。十二時間分はいらない。一ひと晩ばん中はかからない……ひと口だけ飲むよ。二、三時間で大丈夫だろう」
「飲むと最高の気分だぞ」ロンが思い出すように言った。「失敗なんてありえないみたいな」
「何を言ってるの?」ハーマイオニーが笑いながら言った。「あなたは飲んだことがないのよ!」
「ああ、だけど、飲んだと思ったんだ。そうだろ?」
ロンは、言わなくともわかるだろうと言わんばかりだった。
「効果はおんなじさ……」
ハーマイオニーが小声で言った。陰気いんきくさい顔のロンが、がっくり肩を落として穴から出てきたところだった。
「ほんとに運が悪かったわ。些細ささいなことなのに。試験官が、ロンの片方の眉まゆが半分だけ置き去りになっていることに気づいちゃったの……スラグホーンはどうだった?」
「アウトさ」
ハリーがそう答えたとき、ロンがやって来た。
「運が悪かったな、おい。だけど、次は合格だよ――一いっ緒しょに受験できる」
「ああ、そうだな」ロンが不機嫌に言った。「だけど、眉半分だぜ! 目くじら立てるほどのことか?」
「そうよね」ハーマイオニーが慰なぐさめるように言った。「ほんとに厳きびしすぎるわ……」
夕食の時間のほとんどを、三人は「姿すがた現あらわし」の試験官を、こてんぱんにこき下ろすことに費やした。談話室に戻りはじめるころまでには、ロンはわずかに元気を取り戻し、こんどは三人で、まだ解決していないスラグホーンの記憶の問題について話しはじめた。
「それじゃ、ハリー――フェリックス・フェリシスを使うのか、使わないのか?」
ロンが迫せまった。
「うん、使ったほうがよさそうだ」
ハリーが言った。
「全部使う必要はないと思う。十二時間分はいらない。一ひと晩ばん中はかからない……ひと口だけ飲むよ。二、三時間で大丈夫だろう」
「飲むと最高の気分だぞ」ロンが思い出すように言った。「失敗なんてありえないみたいな」
「何を言ってるの?」ハーマイオニーが笑いながら言った。「あなたは飲んだことがないのよ!」
「ああ、だけど、飲んだと思ったんだ。そうだろ?」
ロンは、言わなくともわかるだろうと言わんばかりだった。
「効果はおんなじさ……」