「最高だ」ハリーが言った。「ほんとに最高だ。よーし……これからハグリッドのところに行く」
「えーっ?」
ロンとハーマイオニーが、とんでもないという顔で同時に言った。
「違うわ、ハリー――あなたはスラグホーンのところに行かなきゃならないのよ。憶おぼえてる?」ハーマイオニーが言った。
「いや」ハリーが自信たっぷりに言った。「ハグリッドのところに行く。ハグリッドのところに行くといいことが起こるって気がする」
「巨きょ大だい蜘ぐ蛛もを埋めにいくのが、いいことだって気がするのか?」ロンが唖然あぜんとして言った。
「そうさ」
ハリーは「透とう明めいマント」をカバンから取り出した。
「今晩こんばん、そこに行くべきだという予感よかんだ。わかるだろう?」
「全然」ロンもハーマイオニーも、仰ぎょう天てんしていた。
「これ、フェリックス・フェリシスよね?」
ハーマイオニーは心配そうに、小瓶こびんを灯あかりにかざして見た。
「ほかに小瓶は持ってないでしょうね。たとえば――えーと――」
「『的まと外はずれ薬やく』?」ハリーが「マント」を肩に引っかけるのを見ながら、ロンが意見を述べた。
ハリーが声を上げて笑い、ロンもハーマイオニーもますます仰天した。
「心配ないよ」ハリーが言った。「自分が何をやってるのか、僕にはちゃんとわかってる……少なくとも……」
ハリーは自信たっぷりドアに向って歩き出した。
「フェリックスには、ちゃんとわかっているんだ」
ハリーは透とう明めいマントを頭からかぶり、階段を下りはじめた。ロンとハーマイオニーは急いであとに続いた。階段を降りきったところで、ハリーは開いていたドアをすっと通り抜けた。
「そんなところで、その人と何をしてたの?」
ロンとハーマイオニーが男子寮りょうから一いっ緒しょに現れたところを、ラベンダー・ブラウンがハリーの体を通過つうかして目もく撃げきし、金切かなきり声を上げた。ロンがしどろもどろするのを背後に聞きながら、ハリーは矢のように談だん話わ室しつを横切り、その場から遠ざかった。
肖しょう像ぞう画がの穴を通過するのは、簡単だった。ハリーが穴に近づくのと、ジニーとディーンが出てくるのとが同時で、ハリーは二人の間をすり抜けることができたが、誤あやまってジニーに触ふれてしまった。
「押さないでちょうだい。ディーン」
ジニーが気分を害したように言った。
「あなたって、いつもそうするんだから。私、一人でちゃんと通れるわ……」
肖像画はハリーの背後でバタンと閉まったが、その前に、ディーンが怒って言い返す声が聞こえた……ハリーの高こう揚よう感かんはますます高まった。ハリーは城の中を堂々と歩いた。忍び歩きの必要はなかった。途中、誰だれにも会わなかったが、別に変だとも思わなかった。今夜のハリーは、ホグワーツでいちばん幸運な人間なのだ。