「来てくれたんか」
戸を開け、ハリーが「透とう明めいマント」から姿を現したのを見て、ハグリッドは嗄しわがれ声で言った。
「うん――ロンとハーマイオニーは来られなかったけど」ハリーが言った。「とっても申しわけないって言ってた」
「そんな――そんなことはええ……そんでも、ハリー、おまえさんが来てくれて、あいつは感かん激げきしてるだろうよ……」
ハグリッドは大きく泣きじゃくった。靴くつ墨ずみに浸ひたしたボロ布で作ったような喪章もしょうをつけ、目をまっ赤に泣き腫はらしている。ハリーは慰なぐさめるようにハグリッドの肘ひじをポンポンと叩たたいた。ハリーが楽に届くのは、せいぜいその高さ止まりだった。
「どこに埋めるの?」ハリーが聞いた。「禁じられた森?」
「とんでもねえ」
ハグリッドがシャツの裾すそで流れ落ちる涙を拭ぬぐった。
「アラゴグが死んじまったんで、ほかの蜘く蛛ものやつらは、俺おれを巣のそばに一歩も近づかせねえ。連中が俺を食わんかったんは、どうやら、アラゴグが命令してたかららしい! ハリー、信じられっか?」
正直な答えは、「信じられる」だった。ハリーとロンが、アクロマンチュラと顔つき合わせた場面を、ハリーは痛いほどよく憶おぼえている。アラゴグがいるからハグリッドを食わなかったのだと、連中がはっきり言った。
「森ン中で、俺が行けねえところなんか、いままではなかった!」
ハグリッドは頭を振り振り言った。
「アラゴグの骸むくろをここまで持ってくるんは、並なみたいてぇじゃあなかったぞ。まったく――連中は死んだもんを食っちまうからな……だけんど、俺は、こいつにいい埋まい葬そうをしてやりたかった……ちゃんとした葬式そうしきをな……」
ハグリッドはまた激はげしくすすり上げはじめた。ハリーはハグリッドの肘をまたポンポン叩きながら(薬がそうするのが正しいと知らせているような気がした)、こう言った。
「ハグリッド、ここに来る途中で、スラグホーン先生に会ったんだ」
「問題になったんか?」
ハグリッドは驚いて顔を上げた。
「夜は城を出ちゃなんねえ。わかってるんだ。俺おれが悪い――」
「違うよ。僕がしようとしていることを、先生に話したら、先生もアラゴグに最後の敬意けいいを表ひょうしにきたいって言うんだ」ハリーが言った。「もっとふさわしい服に着き替がえるのに、城に戻もどったんだ、と思うよ……それに、飲み物を何本か持ってくるって。アラゴグの想おもい出に乾かん杯ぱいするために……」
「そう言ったんか?」
ハグリッドは驚いたような、感激かんげきしたような顔をした。
「そりゃ――そりゃ親切だ。そりゃあ。それに、おまえさんを突き出さんかったこともな。俺はこれまであんまり、ホラス・スラグホーンとつき合いがあったわけじゃねえが……だけんど、アラゴグのやつを見送りにきてくれるっちゅうのか? え? ふむ……きっと気に入るだろうよ……アラゴグのやつが」