一時間ほど経たつと、ハグリッドとスラグホーンは、乾かん杯ぱいの大おお盤ばん振ぶる舞まいを始めた。ホグワーツ乾杯、ダンブルドア乾杯、しもべ妖よう精せい醸じょう造ぞうのワイン乾杯――。
「ハリー・ポッターに乾杯!」
バケツ大のマグで十四杯目のワインを飲み干し、飲みこぼしを顎あごから滴したたらせながら、ハグリッドが破われ鐘がねのような声で言った。
「そーだ」
スラグホーンは少し呂律ろれつが回らなくなっていた。
「パリー・オッター、『選ばれし生き残った男の者』――いや――とか何とかに」
ブツブツ言いながら、スラグホーンもマグを飲み干した。
それから間もなく、ハグリッドはまた涙もろくなり、ユニコーンの尻尾しっぽを全部ごっそりスラグホーンに押しつけた。スラグホーンはそれをポケットに入れながら叫さけんだ。
「友情に乾杯! 気前きまえのよさに乾杯! 一本十ガリオンに乾杯!」
それからは、ハグリッドとスラグホーンは並んで腰掛こしかけ、互いの体に腕を回して、オドと呼ばれた魔法使いの死を語る、ゆっくりした悲しい曲をしばらく歌っていた。
「あぁぁぁー、いいやつぁ早はや死じにする」
ハグリッドは、テーブルの上にだらりと首うなだれながら、酔すい眼がんで呟つぶやいた。一方スラグホーンは、声を震ふるわせて歌のリフレインを繰くり返していた。
「俺おれの親父おやじはまーぁだ逝いく歳としじゃぁなかったし……おまえさんの父さん母さんもだぁ、ハリー……」
大粒おおつぶの涙が、またしてもハグリッドの目尻めじりの皺しわから滲にじみ出した。ハグリッドは、ハリーの腕を握って振りながら言った。
「……あの年とし頃ごろの魔女と魔法使いン中じゃあ、俺の知っちょるかぎりいっち番だ……ひどいもんだ……ひどいもんだ……」
スラグホーンは悲しげに歌った。
♪かくしてみんなは英雄えいゆうの、オドを家へと運び込む
その家やはオドがその昔、青年の日を過ごした場
オドの帽子ぼうしは裏返うらがえり、オドの杖つえまでまっぷたつ
悲しい汚名おめいの英雄の、オドはその家に葬ほうむらる
「……ひどいもんだ」
ハグリッドが低く呻うめき、ぼうぼうの頭がころりと横に傾かしいで、両腕にもたれたとたん、大おお鼾いびきをかいて眠り込んだ。
「すまん」スラグホーンがしゃっくりしながら言った。「どうしても調子っぱずれになる」
「ハグリッドは、先生の歌のことを言ったのじゃありません」ハリーが静かに言った。「僕の両親が死んだことを言っていたんです」
「ああ」スラグホーンが、大きなゲップを押さえ込みながら言った。
「ああ、なんと。いや、あれは――あれは本当にひどいことだった。ひどい……ひどい……」
スラグホーンは言葉に窮きゅうした様子で、その場しのぎに二人のマグに酒を注ついだ。