「でも、先生、どうやってやるのか、僕にはよくわかりません」リドルが言った。
慎しん重ちょうに声を抑おさえてはいたが、ハリーはリドルが興こう奮ふんしているのを感じることができた。
「それはだね、魂を分断ぶんだんするわけだ」スラグホーンが言った。
「そして、その部分を体の外にある物に隠かくす。すると、体が攻撃こうげきされたり破滅はめつしたりしても、死ぬことはない。なぜなら、魂の一部は滅ほろびずに地上に残るからだ。しかし、勿論、そういう形での存在は……」
スラグホーンは激はげしく顔をしかめた。ハリー自身も、思わずほぼ二年前に聞いた言葉を思い出していた。
「俺様おれさまは肉体から引き裂さかれ、霊魂れいこんにも満たない、ゴーストの端はしくれにも劣おとるものになった……しかし、俺様はまだ生きていた」
「……トム、それを望む者は滅多めったにおるまい。滅多に。死のほうが望ましいだろう」
しかし、リドルはいまや欲望よくぼうをむき出しにしていた。渇望かつぼうを隠しきれず、貪欲どんよくな表情になっていた。
「どうやって魂を分断するのですか?」
「それは――」
スラグホーンが当惑とうわくしながら言った。
「魂たましいは完全な一体であるはずだということを理解しなければならない。分断ぶんだんするのは暴ぼう力りょく行こう為いであり、自然に逆らう」
「でも、どうやるのですか?」
「邪悪じゃあくな行為――悪の極きわみの行為による。殺人を犯すことによってだ。殺人は魂を引き裂さく。分ぶん霊れい箱ばこを作ろうと意い図とする魔法使いは、破は壊かいを自みずからのために利用する。引き裂かれた部分を物に閉じ込める――」
「閉じ込める? でも、どうやって――?」
「呪じゅ文もんがある。聞かないでくれ。わたしは知らない!」
スラグホーンは年老いた象がうるさい蚊かを追い払うように頭を振った。
「わたしがやったことがあるように見えるかね?――わたしが殺人者に見えるかね?」
「いいえ、先生、もちろん、違います」リドルが急いで言った。
「すみません……お気を悪くさせるつもりは……」
「いや、いや、気を悪くしてはいない」
スラグホーンがぶっきらぼうに言った。
「こういうことにちょっと興味を持つのは自然なことだ……ある程度の才能を持った魔法使いは、常にその類たぐいの魔法に惹ひかれてきた……」