「そうですね、先生」リドルが言った。
「でも、僕がわからないのは――ほんの好こう奇き心しんですが――あの、一個だけの分霊箱で役に立つのでしょうか? 魂は一回しか分断できないのでしょうか? もっとたくさん分断するほうがより確かで、より強力になれるのではないでしょうか? つまり、たとえば、七という数は、いちばん強い魔法数字ではないですか? 七個の場合は――?」
「とんでもない、トム!」
スラグホーンが甲高かんだかく叫さけんだ。
「七個! 一人を殺すと考えるだけでも十分に悪いことじゃないかね? それに、いずれにしても……魂を二つに分断するだけでも十分に悪い……七つに引き裂くなど……」
スラグホーンは、こんどは困り果てた顔で、それまで一度もはっきりとリドルを見たことがないかのような目で、じっとリドルを見つめていた。そもそもこんな話を始めたこと自体を後こう悔かいしているのだと、ハリーには察しがついた。
「勿論もちろん」スラグホーンが呟つぶやいた。
「すべて仮定の上での話だ。我々が話していることは。そうだね? すべて学問的な……」
「ええ、もちろんです。先生」リドルがすぐに答えた。
「しかし、いずれにしても、トム……黙だまっていてくれ。わたしが話したことは――つまり、我々が話したことは、という意味だが。我々が分ぶん霊れい箱ばこのことを気軽に話したことが知れると、世せ間けん体ていが悪い。ホグワーツでは、つまり、この話題は禁じられている……ダンブルドアは特にこのことについて厳きびしい……」
「一言も言いません。先生」
そう言うと、リドルは出ていった。しかしその前に、ハリーはちらりとその顔を見た。自分が魔法使いだとはじめて知ったときに見せたと同じ、あのむき出しの幸福感に満ちた顔だった。幸福感が端正たんせいな面立おもだちを引き立たせるのではなく、なぜか非ひ人にん間げん的てきな顔にしていた……。
「ハリー、ありがとう」ダンブルドアが静かに言った。「戻もどろうぞ……」