「それで……先生はまだ、そうした物を探していらっしゃるのですね? 学校を留守になさったとき、そういう場所を訪たずねていらっしゃったのですか?」
「そうじゃ」ダンブルドアが答えた。
「長いこと探しておった。たぶん……わしの考えでは……ほどなくもう一つ発見できるかもしれぬ。それらしい印しるしがある」
「発見なさったら」ハリーが急いで言った。
「僕も一いっ緒しょに行って、それを破は壊かいする手伝いができませんか?」
ダンブルドアは一いっ瞬しゅん、ハリーをじっと見つめ、やがて口を開いた。
「いいじゃろう」
「いいんですか?」ハリーは、まさかの答えに衝しょう撃げきを受けた。
「いかにも」ダンブルドアはわずかに微笑ほほえんでいた。
「きみはその権利を勝ち取ったと思う」
ハリーは胸が高鳴った。はじめて警告けいこくや庇ひ護ごの言葉を聞かされなかったのがうれしかった。周囲の歴代校長たちは、ダンブルドアの決断けつだんに、あまり感心しないようだった。ハリーには何人かが首を横に振っているのが見えたし、フィニアス・ナイジェラスはフンと鼻はなを鳴らした。
「先生、ヴォルデモートは、分ぶん霊れい箱ばこが壊こわされたとき、それがわかるのですか? 感じるのでしょうか?」ハリーは肖しょう像ぞう画がの反応を無視して尋たずねた。
「非ひ常じょうに興味ある質問じゃ、ハリー。答えは否いなじゃろう。ヴォルデモートはいまや、どっぷりと悪に染そまっておるし、さらに自分自身の肝心かんじんな部分である分霊が、ずいぶん長いこと本体から切り離されておるので、我々が感じるようには感じない。たぶん、自分が死ぬ時点で、あの者は失った物に気づくのであろう……たとえば、ルシウス・マルフォイの口から真実を吐はかせるまで、あの者は日記が破は壊かいされてしまったことに気づかなんだ。日記がずたずたになり、そのすべての力を失ったと知ったとき、ヴォルデモートの怒りたるや、見るも恐ろしいほどじゃったと聞き及ぶ」
「でも、ルシウス・マルフォイがホグワーツに日記を忍び込ませたのは、あいつがそう指示したからでしょう?」
「いかにも。何年も前のことじゃが、あの者が複数ふくすうの分霊箱を作れるという確信があったときにじゃ。しかしながら、ヴォルデモートの命令を待つ手はずじゃったルシウスは、その命令を受けることはなかった。日記をルシウスに預あずけてから間もなく、ヴォルデモートが消えたからじゃ。あの者は、ルシウスが分霊箱をただ大切に護まもるじゃろうと思い、まさか、それ以外のことをするとは思わなかったに違いない。しかし、ヴォルデモートは、ルシウスの恐きょう怖ふ心しんを過大に考えておった。何年も姿を消したままの、死んだと思われるご主人様に対して、ルシウスが持つ恐怖心のことじゃ。もちろん、ルシウスは日記の本ほん性しょうを知らなんだ。あの日記には巧たくみな魔法がかけてあるので、『秘ひ密みつの部へ屋や』をもう一度開かせる物になるだろうと、ヴォルデモートがルシウスに話しておいたのじゃろうと思う。ご主人様の魂たましいの一部が託たくされている物だと知っていたなら、ルシウスは間違いなくあの日記を、もっと恭うやうやしく扱ったことじゃろう――しかし、そうはせずに、ルシウスは、昔の計画を自分自身の目的のために勝手に実行してしまった。アーサー・ウィーズリーの娘のもとに日記を忍び込ませることで、アーサーの信用を傷つけ、わしをホグワーツから追放ついほうさせ、同時に自分にとって非常に不利になる物ぶっ証しょうを片付けるという、一いっ石せき三さん鳥ちょうを狙ねらったのじゃ。ああ、哀あわれなルシウスよ……。一つには、自らの利益のために分ぶん霊れい箱ばこを捨ててしもうたという事実、また一つには昨年の魔法省での大だい失しっ態たいで、ヴォルデモートの逆鱗げきりんに触ふれてしもうた。現在はアズカバンに収しゅう監かんされているから安全じゃと、本人は内心喜んでおるとしても無理からぬことじゃ」