ハリーは、目の前を大股おおまたで往いったり来たりしているダンブルドアを見つめながら、考えた。母親のこと、父親のこと、そしてシリウスのことを思った。セドリック・ディゴリーのことを思った。ヴォルデモート卿の仕業しわざであることがわかっている、あらゆる恐ろしい行為こういのことを思った。胸の中にメラメラと炎が燃え上がり、喉元のどもとを焦こがすような気がした。
「あいつを破滅はめつさせたい」ハリーは静かに言った。
「そして、僕が、そうしてやりたい」
「もちろんきみがそうしたいのじゃ!」ダンブルドアが叫さけんだ。
「よいか。予言はきみが何かをしなければならないという意味ではない! しかし、予言は、ヴォルデモート卿きょうに、きみを『自分に比肩ひけんする者として印しるす』ように仕し向むけた。つまり、きみがどういう道を選ぼうと自由じゃ。予言に背を向けるのも自由なのじゃ! しかしヴォルデモートは、いまでも予言を重要視しておる。きみを追い続けるじゃろう……さすれば、確実に、まさに……」
「一方が、他方の手にかかって死ぬ」ハリーが言った。「そうです」
ハリーはやっと、ダンブルドアが自分に言わんとしていたことがわかった。死に直面する戦いの場に引きずり込まれるか、頭こうべを高く上げてその場に歩み入るかの違いなのだ、とハリーは思った。その二つの道の間には、選択せんたくの余よ地ちはほとんどないという人も、たぶんいるだろう。しかし、ダンブルドアは知っている――僕も知っている。そう思うと、誇ほこらしさが一気に込み上げてきた。そして、僕の両親も知っていた――その二つの間は、天と地ほどに違うのだということを。