「そうなると、もちろん、あなたにとってはちょっとしたジレンマね?」
ハーマイオニーが言った。
「どういうこと?」ハリーが慌あわてて聞いた。
「クィディッチのチームのことよ」ハーマイオニーが言った。
「ジニーとディーンが口をきかなくなると……」
「あ――ああ、うん」ハリーが言った。
「フリットウィックだ」ロンが警報けいほうを出した。
呪じゅ文もん学がくのちっちゃい先生が、三人のほうにひょこひょこやって来た。酢すをワインに変えおおせていたのは、ハーマイオニーだけで、そのフラスコは真紅しんくの液体で満たされていたが、ハリーとロンのフラスコの中身は濁にごった茶色だった。
「さあ、さあ、そこの二人」
フリットウィック先生が咎とがめるようにキーキー言った。
「おしゃべりを減らして、行動を増やす……先生にやって見せてごらん……」
二人は一いっ緒しょに杖つえを上げ、念力ねんりきを集中させてフラスコに杖を向けた。ハリーの酢は氷に変わり、ロンのフラスコは爆発した。
「はい……宿題ね……」
机の下から再び姿を現し、帽子ぼうしのてっぺんからガラスの破片はへんを取り除きながら、フリットウィック先生が言った。
「練習しなさい」
呪文学のあとは、めずらしく三人そろっての自由時間だったので、一緒に談だん話わ室しつに戻もどった。ロンは、ラベンダーとの仲が終わったことで俄然がぜん、気楽になったようだったし、ハーマイオニーもなんだか機嫌きげんがよかった。ただ、どうしてニヤニヤしているのかと聞くと、ハーマイオニーは、「いい天気ね」と言っただけだった。二人とも、ハリーの頭の中で激はげしい戦いが繰くり広げられていることに、気づかないようだった。
あの女ひとはロンの妹だ。
でもディーンを振った!
それでもロンの妹だ。
僕はロンの親友だ!
だからますます悪い。
最初にロンに話せば――。
ロンは君をぶん殴なぐるぞ。
僕が気にしないといったら?
ロンは君の親友だぞ!
ハリーは、肖しょう像ぞう画がの穴を乗り越えて陽ひ当あたりのよい談だん話わ室しつに入っていたことに、自分ではほとんど気づかなかったし、七年生が小さな群れを作っていることも、ハーマイオニーの声を聞くまでは何となく意識しただけだった。
「ケイティ! 帰ってきたのね! 大丈夫?」
ハリーは目を見張った。間違いなくケイティ・ベルだった。完全に健康を取り戻もどした様子のケイティを、友達が歓かん声せいを上げて取り囲んでいた。