「ポッター、我わが輩はいが何を考えているかわかるか?」
スネイプはきわめて低い声で言った。
「我輩は君が嘘うそつきのペテン師しだと思う。そして、今学期一杯、土曜日に罰則ばっそくを受けるに値あたいすると考える。ポッター、君はどう思うかね?」
「僕――僕はそうは思いません。先生」
ハリーはまだスネイプの目を見ないようにしていた。
「ふむ。罰則を受けたあとで君がどう思うか見てみよう」スネイプが言った。
「土曜の朝、十時だ。ポッター。我輩の研究室で」
「でも、先生……」ハリーは絶ぜつ望ぼう的てきになって顔を上げた。
「クィディッチが……最後の試合が――」
「十時だ」
スネイプは黄色い歯を見せてにやりと笑いながら、囁ささやき声で言った。
「哀あわれなグリフィンドールよ……今年は気の毒に、四位だろうな……」
スネイプはそれ以上一言も言わずに、トイレを出ていった。残されたハリーは、ロンでさえいままでに感じたことがないに違いないほどの、ひどい吐き気を催もよおしながら、割れた鏡を見つめていた。
「『だから注意したのに』、なんて言わないわ」
一時間後、談だん話わ室しつでハーマイオニーが言った。
「ほっとけよ、ハーマイオニー」ロンは怒っていた。
ハリーは、結局夕食に行かなかった。まったく食しょく欲よくがなかった。ついいましがた、ロン、ハーマイオニー、ジニーに、何が起こったかを話して聞かせたところだったが、話す必要はなかったようだ。ニュースはすでにあっという間に広まっていた。どうやら「嘆なげきのマートル」が勝手に役目を引き受けて、城中のトイレにポコポコ現れてその話をしたらしい。パンジー・パーキンソンはとっくに医い務む室しつに行ってマルフォイを見み舞まい、時ときを移さず津つ々つ浦うら々うらを回って、ハリーをこき下ろしていた。そしてスネイプは、先生方に何が起こったかを仔細しさいに報告していた。
ハリーはすでに談話室から呼び出され、マクゴナガル先生と差さし向かいで、非常に不ふ愉ゆ快かいな十五分間を耐え忍んだ。マクゴナガル先生は、ハリーが退学にならなかったのは幸運だと言い、今学期中すべての土曜日に罰則ばっそくというスネイプの処罰しょばつを、全面的に支し持じした。