ハリーがジニー・ウィーズリーとつき合っている。そのことは大勢の、特に女の子の関心の的まとになっているようだった。しかし、それからの数週間、ハリーは噂うわさ話ばなしなど、まったく気にならないほど幸せだった。ずいぶん長い間、こんなに幸福な気持になったことがなかったし、幸せなことで人の口に上るのは、闇やみの魔ま術じゅつの恐ろしい場面に巻き込まれて噂になるばかりだったハリーにとって、すばらしい変化だった。
「ほかにもっと噂話のネタはあるでしょうに」
談だん話わ室しつの床に座り、ハリーの脚あしに寄り掛かって「日刊にっかん予よ言げん者しゃ新しん聞ぶん」を読んでいたジニーが言った。
「この一週間で三件も吸きゅう魂こん鬼き襲しゅう撃げき事件じけんがあったっていうのに、ロミルダ・ベインが私に聞くことといったら、ハリーの胸にヒッポグリフの大きな刺青いれずみがあるというのは本当か、だって」
ロンとハーマイオニーが大笑いするのを、ハリーは無視した。
「何て答えたんだい?」
「ハンガリー・ホーンテールだって言ってやったわ」
のんびりと新聞のページをめくりながら、ジニーが答えた。
「ずっとマッチョっぽいじゃない」
「ありがと」ハリーはニヤッと笑った。
「それで、ロンには何の刺青があるって言ったんだい?」
「ピグミーパフ。でも、どこにあるかは言わなかったわ」
ハーマイオニーは笑い転げ、ロンはしかめっ面で睨にらんだ。
「気をつけろ」
ロンがハリーとジニーを指差して、警告けいこくするように言った。
「許可を与えることは与えたけど、撤回てっかいしないとは言ってないぞ――」
「『許可』?」ジニーがふんと言った。
「いつからわたしのすることに、許可を与えるようになったの? どっちにしろ、マイケルやディーンなんかよりハリーだったらいいのにって言ったのは、あなたご自身ですからね」
「ああ、そのほうがいいさ」ロンがしぶしぶ認めた。
「君たちが公こう衆しゅうの面前でイチャイチャしないかぎり――」
「偽ぎ善ぜん者しゃもいいとこだわ! ラベンダーとあなたのことは、どうなの? あっちこっちで二匹のうなぎみたいにヌメヌメのたうってたのは、どなた?」ジニーが食ってかかった。