六月に入ると、ロンの我慢がまんの限界を試す必要もなくなっていた。ハリーとジニーが、二人一いっ緒しょに過ごす時間がどんどん少なくなっていたのだ。O・W・Lふくろう試験が近づいて、ジニーは夜遅くまで勉強しなければならなかった。そんなある夜、ジニーが図書室にこもり、ハリーは談話室の窓際まどぎわに腰掛こしかけて、薬やく草そう学がくの宿題を仕上げていた。しかし、それはうわべだけで、実は昼休みにジニーと湖のそばで過ごした、この上なく幸せな時間を追想ついそうしていたのだ。そのとき、ハーマイオニーが、何か含むところがあるような顔で、ハリーとロンの間に座った。
「ハリー、お話があるの」
「何だい?」
ハリーは、いやな予感を抱きながら聞き返した。つい昨日きのうも、ハーマイオニーは、ジニーは試験のために猛もう勉強をしなければならないのだから邪魔じゃまをしてはいけないと、ハリーに説せっ教きょうしたばかりだった。
「いわゆる『半はん純じゅん血けつのプリンス』のこと」
「またか」ハリーが呻うめいた。「頼むからやめてくれないか?」
ハリーは、教科書を取りに「必要の部屋」に戻もどる勇気がなかった。その結果、魔ま法ほう薬やくの成績が被害ひがいを受けた(ただし、スラグホーンは、お気に入りのジニーがハリーの相手だったので、恋の病のせいだと茶化ちゃかしてすませた)。それでもハリーは、スネイプがプリンスの本を没収する望みをまだ捨ててはいないと確信かくしんしていたので、スネイプの目が光っているうちは、本をそのままにしておこうと決めていた。
「やめないわ」
ハーマイオニーがきっぱりと言った。
「あなたが私の言うことをちゃんと聞くまではね。闇やみの呪じゅ文もんを発明する趣味しゅみがあるのは、どういう人なのか、私、少し探ってみたの」
「彼は、趣味でやったんじゃない――」
「彼、彼って――どうして男性なの?」
「前にも、同じやり取りをしたはずだ」ハリーが苛立いらだった。
「プリンスだよ、ハーマイオニー、プリンス!」
「いいわ!」
ハーマイオニーの頬ほおがパッと赤く燃え上がった。ハーマイオニーはポケットからとびきり古い新しん聞ぶんの切り抜きを引っぱり出して、ハリーの目の前の机にバンと叩たたきつけた。
「見て! この写真を見るのよ!」
ハリーはボロボロの紙切れを拾い上げ、セピア色に変色した動く写真を見つめた。ロンも体を曲げて覗のぞき込んだ。十五歳ぐらいの、痩やせた少女の写真だった。かわいいとは言えない。太く濃こい眉まゆに、蒼あお白じろい面長おもながな顔は、苛立いらだっているようにも、すねているようにも見えた。写真の下にはこう書いてある。
「アイリーン・プリンス。ホグワーツ・ゴブストーン・チームのキャプテン」