「スネイプ先生はひどい間違――」
「間違いを犯したなんて、言わないでください。先生、あいつは扉とびらのところで盗とう聴ちょうしてたんだ!」
「最後まで言わせておくれ」
ダンブルドアは、ハリーが素そっ気けなく頷うなずくまで待った。
「スネイプ先生はひどい間違いを犯した。トレローニー先生の予言の前半を聞いたあの夜、スネイプ先生はまだヴォルデモート卿きょうの配下だった。当然、ご主人様に、自分が聞いたことを急いで伝えた。それが、ご主人様に深く関わる事柄ことがらだったからじゃ。しかし、スネイプ先生は知らなかった――知る由よしもなかったのじゃ――ヴォルデモートがその後、どこの男の子を獲物えものにするのかも知らず、ヴォルデモートの残忍ざんにんな追つい及きゅうの末に殺される両親が、スネイプ先生の知っている人々だとは、知らなかったのじゃ。それがきみの父君、母君だとは――」
ハリーは、虚うつろな笑い声を上げた。
「あいつは僕の父さんもシリウスも、同じように憎んでいた! 先生、気がつかないんですか? スネイプが憎んだ人間は、なぜか死んでしまう」
「ヴォルデモート卿が予言をどう解かい釈しゃくしたのかに気づいたとき、スネイプ先生がどんなに深い自責じせきの念ねんに駆かられたか、きみには想像もつかぬじゃろう。人生最大の後悔こうかいだったじゃろうと、わしはそう信じておる。それ故ゆえに、スネイプ先生は戻もどってきた――」
「でも、先生、あいつこそ、とても優すぐれた閉へい心しん術じゅつ者しゃじゃないんですか?」
平静へいせいに話そうと努力することで、ハリーの声は震ふるえていた。
「それに、ヴォルデモートは、いまでも、スネイプが自分の味方だと信じているのではないですか? 先生……スネイプがこっちの味方だと、なぜ確信かくしんしていらっしゃるのですか?」
ダンブルドアは、一いっ瞬しゅん沈ちん黙もくした。何事かに関して、意い思しを固めようとしているかのようだった。しばらくしてダンブルドアは口を開いた。
「わしは確信しておる。セブルス・スネイプを完全に信用しておる」
ハリーは自分を落ち着かせようと、しばらく深呼吸した。しかし、むだだった。
「でも、僕は違います!」
ハリーはまた大声を出していた。
「あいつは、いまのいま、ドラコ・マルフォイと一いっ緒しょに何か企たくらんでる。先生の目と鼻の先で。それでも先生はまだ――」
「ハリー、このことはもう話し合ったじゃろう」
ダンブルドアは再び厳きびしい口調に戻った。
「わしの見解けんかいはもうきみに話した」
「先生は今夜、学校を離れる。それなのに、先生はきっと、考えたこともないんでしょうね、スネイプとマルフォイが何かするかもしれないなんて――」
「何をするというのじゃ?」
ダンブルドアは眉まゆを吊つり上げた。
「具体的に、二人が何をすると疑っておるのじゃ?」