「僕は……あいつらは何か企たくらんでるんだ!」
そう言いながら、ハリーは拳こぶしを固めていた。
「トレローニー先生がいま『必要の部屋』に入って、シェリー酒の瓶びんを隠かくそうとしていたんです。そしたら、マルフォイが何かを祝って喜んでいる声を聞いたんです! あの部屋で、マルフォイは何か危険な物を修理しようとしていた。きっと、とうとう修理が終わったんです。それなのに、先生は、学校を出ていこうとしている。何にもせず――」
「もうよい」
ダンブルドアの声はとても静かだったが、ハリーはすぐに黙だまった。ついに見えない線を踏ふみ越えてしまったと気づいたのだ。
「今学年になって、わしの留守中に、学校を無む防ぼう備びの状じょう態たいで放置ほうちしたことが、一度たりともあると思うか? 否いなじゃ。今夜、わしがここを離れるときには、再び追つい加か的てきな保ほ護ご策さくが施ほどこされるであろう。ハリー、わしが生徒たちの安全を真剣しんけんに考えていないなどと、仮初かりそめにも言うではないぞ」
「そんなつもりでは――」
ハリーは少し恥はじ入って、口ごもったが、ダンブルドアがその言葉を遮さえぎった。
「このことは、これ以上話したくはない」
ハリーは、返す言葉を呑のみ込んだ。言いすぎて、ダンブルドアと一いっ緒しょに行く機会をだめにしてしまったのではないかと恐れたが、ダンブルドアは言葉を続けた。
「今夜は、わしと一緒に行きたいか?」
「はい」ハリーは即座そくざに答えた。
「よろしい。それでは、よく聞くのじゃ」
ダンブルドアは背筋せすじを正し、威厳いげんに満ちた姿で言った。
「連れていくには、一つ条件がある。わしが与える命令には、すぐに従うことじゃ。しかも質問することなしにじゃ」
「もちろんです」
「ハリー、よく理解するのじゃ。わしは、どんな命令にも従うように言うておる。たとえば、『逃げよ』、『隠かくれよ』、『戻もどれ』などの命令もじゃ。約束できるか?」
「僕――はい、もちろんです」
「わしが隠れるように言うたら、そうするか?」
「はい」
「わしが逃げよと言うたら、従うか?」
「はい」
「わしを置き去りにせよ、自らを助けよと言うたら、言われたとおりにするか?」
「僕――」
「ハリー?」
二人は一いっ瞬しゅん見つめ合った。
「はい、先生」
「よろしい。それでは、戻もどって『透とう明めいマント』を取ってくるのじゃ。五分後に正しょう面めん玄げん関かんで落ち合うこととする」
ダンブルドアは後ろを向き、まっ赤に染そまった窓から外を見た。太陽がいまやルビーのように赤々と、地ち平へい線せんに沈もうとしていた。ハリーは急いで校長室を出て、螺ら旋せん階かい段だんを下りた。不思議にも、急に頭が冴さえ冴ざえとしてきた。何をなすべきかがわかっていた。
邓布利多转过身,看着火红的窗户外面,现在太阳正在天边闪耀着红宝石一般的光芒。哈利快速地走出办公室,走下螺旋形楼梯。他的思维很奇怪地突然变得很清晰,他知道要做什么了。