ハリーが談だん話わ室しつに戻もどったとき、ロンとハーマイオニーは一いっ緒しょに座っていた。
「ダンブルドアは何のご用だったの?」
ハーマイオニーが間髪かんはつを入れずに聞いた。
「ハリー、あなた、大丈夫?」
ハーマイオニーは心配そうに聞いた。
「大丈夫だ」
ハリーは足早に二人のそばを通り過ぎながら、短く答えた。階段を駆かけ上がり、寝室しんしつに入り、トランクを勢いよく開けて「忍しのびの地ち図ず」と丸めたソックスを一足引っぱり出した。それから、また急いで階段を下りて談話室に戻り、呆然ぼうぜんと座ったままのロンとハーマイオニーのところまで駆け戻って急停止した。
「時間がないんだ」
ハリーは息を弾はずませて言った。
「ダンブルドアは、僕が『透明マント』を取りに戻ったと思ってる。いいかい……」
ハリーは、どこへ何のために行くのかを、二人にかい摘つまんで話した。ハーマイオニーが恐きょう怖ふに息を呑のんでも、ロンが急いで質問しても、ハリーは話を中断しなかった。細かいことはあとで二人で考えることができるだろう。
「……だから、どういうことかわかるだろう?」
ハリーは、最後までまくし立てた。
「ダンブルドアは今夜ここにいない。だからマルフォイは、何を企たくらんでいるにせよ、邪魔じゃまが入らないいいチャンスなんだ。いいから、聞いてくれ!」
ロンとハーマイオニーが口を挟はさみたくてたまらなそうにしたので、ハリーは噛かみつくように言った。
「『必要の部屋』で歓声かんせいを上げていたのはマルフォイだってことが、僕にはわかっているんだ。さあ――」
ハリーは「忍しのびの地ち図ず」をハーマイオニーの手に押しつけた。
「マルフォイを見張らないといけない。それにスネイプも見張らないといけない。ほかに誰だれでもいいから、DディーAエイのメンバーを掻かき集められるだけ集めてくれ。ハーマイオニー、ガリオン金貨の連れん絡らく網もうはまだ使えるね? ダンブルドアは学校に追つい加か的てきな保ほ護ご策さくを施ほどこしたっていうけど、スネイプが絡からんでいるのなら、ダンブルドアの保護措そ置ちのことも、回避かいひの方法も知られている――だけど、スネイプは、君たちが監視かんししているとは思わないだろう?」
「ハリー――」ハーマイオニーは恐きょう怖ふに目を見開いて、何か言いかけた。
「議論ぎろんしている時間がない」ハリーは素そっ気けなく言った。
「これも持っていて――」ハリーは、ロンの両手にソックスを押しつけた。
「ありがと」ロンが言った。「あー――どうしてソックスが必要なんだ?」
「その中に包くるまっている物が必要なんだ。フェリックス・フェリシスだ。君たちとジニーとで飲んでくれ。ジニーに、僕からのさよならを伝えてくれ。もう行かなきゃ。ダンブルドアが待ってる――」
「だめよ!」
ロンが、畏敬いけいの念ねんに打たれたような顔で、靴下くつしたの中から小さな金色の薬が入った瓶びんを取り出したとき、ハーマイオニーが言った。
「私たちはいらない。あなたが飲んで。これから何があるかわからないでしょう?」
「僕は大丈夫だ。ダンブルドアと一いっ緒しょだから」ハリーが言った。
「僕は、君たちが無事だと思っていたいんだ……そんな顔しないで、ハーマイオニー。あとでまた会おう……」
そして、ハリーはその場を離れて肖しょう像ぞう画がの穴をくぐり、正面玄げん関かんへと急いだ。