二人は、どのくらいの時間、留る守すにしていたのだろう。ロンやハーマイオニー、ジニーの幸運は、もう効きき目が切れたのだろうか? 学校の上空にあの印が上がったのは、三人のうちの誰だれかに何かあったからなのだろうか、それともネビルかルーナか? DディーAエイのメンバーの誰かではないだろうか? そしてもしそうなら……廊下ろうかをパトロールしろと言ったのは自分だ。ベッドにいれば安全なのに、ベッドを離れるように頼んだのは自分だ……またしても僕のせいで、友人が死んだのだろうか?
出発のときに歩いた、曲がりくねった暗い道の上空を飛びながら、耳元で鳴る夜風のヒューヒューという音の合間に、ハリーは、ダンブルドアがまたしても不ふ可か解かいな言葉を唱となえるのを聞いた。校庭に入る境きょう界かい線せんを飛び越えた瞬しゅん間かん、箒が振動しんどうするのを感じた理由が、ハリーにはわかった。ダンブルドアは、自分が城にかけた呪じゅ文もんを解かい除じょし、二人が高速で突破とっぱできるようにしていたのだ。「闇の印」は、城でいちばん高い天てん文もん台だいの塔とうの真上で光っていた。そこで殺人があったのだろうか?
ダンブルドアは、塔の屋上の、銃じゅう眼がんつきの防壁ぼうへきをすでに飛び越え、箒から降りるところだった。ハリーもすぐあとからそのそばに降り、あたりを見回した。
防壁の内側には人影がなかった。城の内部に続く螺ら旋せん階かい段だんの扉とびらは閉まったままだ。争いの跡あとも、死闘しとうが繰くり広げられた形跡けいせきもなく、死体すらない。
「どういうことでしょう?」
ハリーは、頭上に不気味に光る蛇舌へびじたの髑髏を見上げながら、ダンブルドアに問いかけた。
「あれは本当の印でしょうか? 誰かが本当に――先生?」
印が放はなつ微かすかな緑の光に、黒ずんだ手で胸を押さえているダンブルドアが見えた。
「セブルスを起こしてくるのじゃ」ダンブルドアは微かすかな声で、しかしはっきりと言った。
「何があったかを話し、わしのところへ連れてくるのじゃ。ほかには何もするでないぞ。ほかの誰だれにも話をせず、『透とう明めいマント』を脱がぬよう。わしはここで待っておる」
「でも――」
「わしに従うと誓ちかったはずじゃ、ハリー――行くのじゃ!」
ハリーは螺ら旋せん階かい段だんの扉とびらへと急いだ。しかし扉の鉄の輪に手が触ふれたとたん、扉の内側から誰かが走ってくる足音が聞こえた。振り返ると、ダンブルドアは退たい却きゃくせよと身み振ぶりで示していた。ハリーは杖つえを構かまえながら後退あとずさりした。