「しかし、ときには――」ダンブルドアが言葉を続けた。
「キャビネット棚だなを修理できないのではないかと思ったこともあったのじゃろうな? そこで、粗雑そざつで軽率けいそつな方法を使おうとしたのう。どう考えてもほかの者の手に渡ってしまうのに、呪のろわれたネックレスをわしに送ってみたり……わしが飲む可能性はほとんどないのに、蜂はち蜜みつ酒しゅに毒を入れてみたり……」
「そうだ。だけど、それでも誰だれが仕組んだのか、わからなかったろう?」
マルフォイがせせら笑った。ダンブルドアの体が、防壁ぼうへきにもたれたままわずかにずり落ちた。足の力が弱ってきたに違いない。ハリーは自分を縛しばっている呪じゅ文もんに抗あらがって、声もなく空むなしくもがいた。
「実はわかっておった」ダンブルドアが言った。「きみに間違いないと思っておった」
「じゃ、なぜ止めなかった?」マルフォイが詰め寄った。
「そうしようとしたのじゃよ、ドラコ。スネイプ先生が、わしの命を受けて、きみを見張っておった――」
「あいつは校長の命令で動いていたんじゃない。僕の母上に約束して――」
「もちろん、ドラコ、スネイプ先生は、きみにはそう言うじゃろう。しかし――」
「あいつは二重スパイだ。あんたも老いぼれたものだ。あいつは校長のために働いていたんじゃない。あんたがそう思い込こんでいただけだ!」
「その点は、意見が違うと認め合わねばならぬのう、ドラコ。わしは、スネイプ先生を信じておるのじゃ――」
「それじゃ、あんたには事態じたいがわかってないってことだ!」マルフォイがせせら笑った。
「あいつは僕を助けたいとさんざん持ちかけてきた――全部自分の手柄てがらにしたかったんだ――一枚加わりたかったんだ――『何をしておるのかね? 君がネックレスを仕し掛かけたのか? あれは愚おろかしいことだ。全部台無だいなしにしてしまったかもしれん――』。だけど僕は、『必ひつ要ようの部へ屋や』で何をしているのか、あいつに教えなかった。明日あした、あいつが目を覚ましたときには全部終わっていて、もうあいつは、闇やみの帝てい王おうのお気に入りじゃなくなるんだ。僕に比べればあいつは何者でもなくなる。ゼロだ!」
「満足じゃろうな」ダンブルドアが穏おだやかに言った。
「誰でも、一いっ所しょ懸命けんめいやったことを褒ほめてほしいものじゃ、もちろんのう……しかし、それにしてもきみには共きょう犯はん者しゃがいたはずじゃ……ホグズミードの誰かが。ケイティにこっそりあれを手渡す――あっ――あぁぁー……」
ダンブルドアは再び目を閉じてこくりと頷うなずいた。まるでそのまま眠り込むかのようだった。