「ハグリッド……」
「しかし、ハリー、何があったんだ? 俺は、死し喰くい人びとが城から走り出してくるのを見ただけだ。だけんど、いってぇスネイプは、あいつらと一緒に何をしてたんだ? スネイプはどこに行っちまった――? 連中を追っかけていったのか?」
「スネイプは……」ハリーは咳払せきばらいした。パニックと煙で、喉のどがからからだった。
「ハグリッド、スネイプが殺した……」
「殺した?」
ハグリッドが大声を出して、ハリーを覗のぞき込んだ。
「スネイプが殺した? ハリー、おまえさん、何を言っちょる?」
「ダンブルドアを」ハリーが言った。「スネイプが殺した……ダンブルドアを」
ハグリッドはただハリーを見ていた。わずかに見えている顔の部分が、呑のみ込めずにポカンとしていた。
「ハリー、ダンブルドアがどうしたと?」
「死んだんだ。スネイプが殺した……」
「何を言っちょる」ハグリッドが声を荒らげた。
「スネイプがダンブルドアを殺した――ばかな、ハリー。なんでそんなことを言うんだ?」
「この目で見た」
「まさか」
「ハグリッド、僕、見たんだ」
ハグリッドが首を振った。信じていない。可愛かわいそうにという表情だった。ハリーは頭を打って混乱こんらんしちょる、もしかしたら呪じゅ文もんの影えい響きょうが残っているのかもしれねえ……ハグリッドがそう考えているのが、ハリーにはわかった。
「つまり、こういうこった。ダンブルドアがスネイプに、死し喰くい人びとと一いっ緒しょに行けと命じなさったに違ちげえねえ」
ハグリッドが自信たっぷりに言った。
「スネイプがバレねえようにしねえといかんからな。さあ、学校まで送っていこう。ハリー、おいで……」
ハリーは反論も説明もしなかった。まだ、どうしようもなく震ふるえていた。ハグリッドにはすぐわかるだろう。あまりにもすぐに……。城に向かって歩いていくと、いまはもう多くの窓に灯あかりが点ついているのが見えた。ハリーには城内の様子がはっきり想像できた。部屋から部屋へと人が行いき交かい、話をしているだろう。死喰い人が侵しん入にゅうした、闇やみの印しるしがホグワーツの上に輝かがやいている、誰だれかが殺されたに違いない……。