「何が起こったのか、私わたくしにははっきりわかりません」
マクゴナガル先生は、気持が乱れているようだった。
「わからないことだらけです……ダンブルドアは、数時間学校を離れるから念ねんのため廊下ろうかの巡じゅん回かいをするようにとおっしゃいました……リーマス、ビル、ニンファドーラを呼ぶようにと……そしてみんなで巡回しました。まったく静かなものでした。校外に通じる秘密の抜け道は全部警備けいびされていましたし、誰も空から侵しん入にゅうできないこともわかっていました。城に入るすべての入口には強力な魔法がかけられていました。いったい『死喰い人』がどうやって侵入したのか、私わたくしにはいまだにわかりません……」
「僕は知っています」
ハリーが言った。そして「姿すがたをくらますキャビネット棚だな」が対ついになっていること、その二つの棚を魔法の通路が結ぶこと、を簡単に説明した。
「それで連中は、『必要の部屋』から入り込んだんです」
そんなつもりはなかったのに、ハリーは、ロンとハーマイオニーをちらりと見た。二人とも打ちのめされたような顔だった。
「ハリー、僕、しくじった」ロンが沈んだ声で言った。
「僕たち、君に言われたとおりにしたんだ。『忍しのびの地ち図ず』を調しらべたら、マルフォイが地図では見つからなかったから、『必要の部屋』に違いないと思って、僕とジニーとネビルが見張りにいったんだ……だけど、マルフォイに出し抜かれた」
「見張りを始めてから一時間ぐらいで、マルフォイがそこから出てきたの」ジニーが言った。
「一人で、あの気持の悪い『萎しなびた手』を持って――」
「あの『輝かがやきの手』だ」ロンが言った。
「ほら、持っている者だけに明かりが見えるってやつだ。憶おぼえてるか?」
「とにかく」ジニーが続けた。
「マルフォイは、『死し喰くい人びと』を外に出しても安全かどうかを偵察ていさつに出てきたに違いないわ。だって、わたしたちを見たとたん、何かを空中に投げて、そしたらあたりがまっ暗になって――」
「――ペルー製の『インスタント煙幕えんまく』だ」ロンが苦々にがにがしく言った。
「フレッドとジョージの。相手を見て物を売れって、あいつらに一言、言ってやらなきゃ」
「わたしたち、何もかも全部やってみたわ――ルーモス、インセンディオ」ジニーが言った。
「何をやっても暗くら闇やみを破れなかった。廊下ろうかから手探りで抜け出すことしかできなかったわ。その間に、誰だれかが急いでそばを通り過ぎる音がした。当然マルフォイは、あの『手』のおかげで見えたから、連中を誘導ゆうどうしてたんだわ。でもわたしたちは、仲間に当たるかもしれないと思うと、呪じゅ文もんも何も使えやしなかった。明るい廊下に出たときには、連中はもういなかった」