「幸いなことに」
ルーピンが嗄しわがれ声で言った。
「ロン、ジニー、ネビルは、それからすぐあとに我々と出会って、何があったかを話してくれた。数分後に我々は、天てん文もん台だいの塔とうに向かっていた『死喰い人』を見つけた。マルフォイは、ほかにも見張りの者がいるとは、まったく予想よそうしていなかったらしい。いずれにせよ『インスタント煙幕』は尽きていたらしい。戦いが始まり、連中は散らばって、我々が追った。ギボンが一人抜け出して、塔に上がる階段に向かった――」
「『闇やみの印しるし』を打ち上げるため?」ハリーが聞いた。
「ギボンが打ち上げたに違いない。そうだ。連中は『必要の部屋』を出る前に、示し合わせたに違いない」
ルーピンが言った。
「しかしギボンは、そのままとどまって、一人でダンブルドアを待ち受ける気にはならなかったのだろう。階下かいかに駆かけ戻もどって、また戦いに加わったのだから。そして、私をわずかに逸それた『死しの呪のろい』に当たった」
「それじゃ、ロンは、ジニーとネビルと一いっ緒しょに『必要の部屋』を見張っていた」
ハリーはハーマイオニーのほうを向いた。
「君は――?」
「スネイプの部屋の前、そうよ」
ハーマイオニーは目に涙なみだを光らせながら、小声で言った。
「ルーナと一いっ緒しょに。ずいぶん長いことそこにいたんだけど、何も起こらなかった……上のほうで何が起こっているのかわからなかったの。ロンが『忍しのびの地ち図ず』を持っていたし……フリットウィック先生が地ち下か牢ろうに走ってきたのは、もう真夜中近くだった。『死し喰くい人びと』が城の中にいるって、叫さけんでいたわ。私とルーナがそこにいることには、全然気がつかなかったのじゃないかと思う。まっすぐにスネイプの部屋に飛び込んで、スネイプに自分と一緒に来て加か勢せいしてくれと言っているのが聞こえたわ。それからドサッという大きな音がして、スネイプが部屋から飛び出してきたの。そして私たちのことを見て――そして――」
「どうしたんだ?」ハリーは先を促うながした。
「私、ばかだったわ、ハリー!」
ハーマイオニーが上ずった声で囁ささやくように言った。
「スネイプは、フリットウィック先生が気絶きぜつしたから、私たちで面倒を看みなさいって言った。そして自分は――自分は『死喰い人』との戦いの加勢に行くからって――」
ハーマイオニーは恥はじて顔を覆おおい、指の間から話し続けたので声がくぐもっていた。
「私たち、フリットウィック先生を助けようとして、スネイプの部屋に入ったの。そしたら、先生が気を失って床に倒れていて……ああ、いまならはっきりわかるわ。スネイプがフリットウィックに『失しっ神しん呪じゅ文もん』をかけたのよ。でも気がつかなかった。ハリー、私たち、気がつかなかったの。スネイプを、みすみす行かせてしまった!」
「君の責任じゃない」
ルーピンがきっぱりと言った。
「ハーマイオニー、スネイプの言うことに従わなかったら、邪魔じゃまをしたりしたら、あいつはおそらく君もルーナも殺していただろう」