先生方のやり取りを、大きな水玉模様もようのハンカチを当てて泣きながら、黙だまって聞いていたハグリッドが、まっ赤に泣き腫はらした目を上げて、嗄しわがれ声で言った。
「俺おれにはわかんねえです、先生……寮りょう監かんと校長が決めるこってす……」
「ダンブルドア校長は、いつもあなたの意見を尊そん重ちょうしました」
マクゴナガル先生が優やさしく言った。
「私わたくしもそうです」
「そりゃ、俺はとどまります」
ハグリッドが言った。大粒おおつぶの涙なみだが目の端はしからぼろぼろこぼれ続け、モジャモジャ髯ひげに滴したたり落ちていた。
「俺の家うちです。十三歳じゅうさんのときから俺の家だったです。俺に教えてほしいっちゅう子供がいれば、俺おれは教える。だけんど……俺にはわからねえです……ダンブルドアのいねえホグワーツなんて……」
ハグリッドはゴクリと唾つばを飲み込み、またハンカチで顔を隠かくした。みんなが黙だまり込んだ。
「わかりました」
マクゴナガル先生は窓から校庭をちらりと眺ながめ、大臣がもうやってくるかどうかを確かめた。
「では、私わたくしはフィリウスと同意見です。理り事じ会かいにかけるのが正当であり、そこで最終的な結論が出るでしょう」
「さて、生徒を家に帰す件ですが……一刻いっこくも早いほうがよいという意見があります。必要とあらば、明日にもホグワーツ特急を手配できます――」
「ダンブルドアの葬儀そうぎはどうするんですか?」ハリーはついに口を出した。
「そうですね……」
マクゴナガル先生の声が震ふるえ、きびきびした調子が少し翳かげった。
「私わたし――私わたくしは、ダンブルドアが、このホグワーツに眠ることを望んでおられたのを知っています――」
「それなら、そうなりますね?」ハリーが激はげしく言った。
「魔法省がそれを適切てきせつだと考えるならです」マクゴナガル先生が言った。
「これまで、ほかのどの校長もそのようには――」
「ダンブルドアほどこの学校にお尽くしなさった校長は、ほかに誰だれもいねえ」
ハグリッドが呻うめくように言った。
「ホグワーツこそ、ダンブルドアの最後の安息あんそくの地になるべきです」
フリットウィック先生が言った。
「そのとおり」スプラウト先生が言った。
「それなら」ハリーが言った。「葬儀が終わるまでは、生徒を家に帰すべきではありません。みんなもきっと――」
最後の言葉が喉のどに引っかかった。しかし、スプラウト先生が引き取って続けた。
「お別れを言いたいでしょう」