「そんなに悪い人じゃないよ」ハリーが言った。「ブスだけどね」ジニーが眉まゆを吊つり上げたので、ハリーが慌あわててつけ加えると、ジニーはしかたなしにクスクス笑った。
「そうね、ママが我慢がまんできるなら、わたしもできると思うわ」
「ほかに誰だれか知ってる人が死んだかい?」
「夕ゆう刊かん予よ言げん者しゃ新しん聞ぶん」に目を通していたハーマイオニーに、ロンが聞いた。ハーマイオニーは、無理に力んだようなロンの声の調子にたじろいだ。
「いいえ」新聞を畳たたみながら、ハーマイオニーが咎とがめるように言った。
「スネイプを追っているけど、まだ何の手がかりも……」
「そりゃ、ないだろう」
この話題が出るたびに、ハリーは腹を立てていた。
「ヴォルデモートを見つけるまでは、スネイプも見つからないさ。それに魔法省の連中は、いままで一度だって見つけたためしがないじゃないか……」
「もう寝るわ」ジニーが欠伸あくびしながら言った。
「わたし、あまりよく寝てないの……あれ以来……少し眠らなくちゃ」
ジニーはハリーにキスして(ロンはあてつけがましくそっぽを向いた)、あとの二人におやすみと手を振り、女子寮りょうに帰っていった。寮のドアが閉まったとたん、ハーマイオニーが、いかにもハーマイオニーらしい表情で、ハリーのほうに身を乗り出した。
「ハリー、私、発見したことがあるの。今け朝さ、図書室で……」
「Rアール・Aエイ・Bビー?」ハリーが椅い子すに座り直した。
これまでのハリーなら、興こう奮ふんしたり好奇心に駆かられたり、謎なぞの奥底が知りたくて、もどかしい思いをしたものだったが、もはやそのようには感じられなくなっていた。まず本物の分ぶん霊れい箱ばこに関する真実を知るのが任務にんむだ、ということだけはわかっていた。それができたときはじめて、目の前に伸びる曲きょく折せつした暗い道を、少しは先に進むことができるだろう。ハリーが、ダンブルドアと一いっ緒しょに歩き出した道程みちのりだ。その旅をひとりで続けなければならないのだということを、ハリーはいま、思い知っていた。あと四個もの分霊箱が、どこかにある。その一つひとつを探し出してすべて消しょう滅めつさせなければ、ヴォルデモート自身を殺す可能性さえない。ハリーは、分霊箱の名前を列挙れっきょすることで、それを手の届くところに持ってくることができるかのように、何度も復ふく唱しょうしていた。ロケット……カップ……蛇へび……グリフィンドールかレイブンクロー縁ゆかりの品……ロケット……カップ……蛇……グリフィンドールかレイブンクロー縁の品……。