「ハリー!」
振り返ると、ルーファス・スクリムジョールだった。ステッキにすがって足を引きずりながら、岸辺きしべの道を大急ぎでハリーに近づいてくるところだった。
「君と一言話がしたかった……少し一いっ緒しょに歩いてもいいかね?」
「ええ」ハリーは気のない返事をして、また歩き出した。
「ハリー、今回のことは、恐ろしい悲劇ひげきだった」
スクリムジョールが静かに言った。
「知らせを受けて、私がどんなに愕然がくぜんとしたか、言葉には表せない。ダンブルドアは偉大いだいな魔法使いだった。君も知っているように、私たちには意見の相違そういもあったが、しかし、私ほどよく知る者はほかに――」
「何の用ですか?」ハリーはぶっきらぼうに聞いた。
スクリムジョールはむっとした様子だったが、前のときと同じように、すぐに表情を取り繕つくろい、悲しげな物わかりのよい顔になった。
「君は、当然だが、ひどいショックを受けている」スクリムジョールが言った。
「君がダンブルドアと非常に親ちかしかったことは知っている。おそらく君は、ダンブルドアのいちばんのお気に入りだったろう。二人の間の絆きずなは――」
「何の用ですか?」ハリーは、立ち止まって繰くり返した。
スクリムジョールも立ち止まってステッキに寄り掛かかり、こんどは抜け目のない表情でハリーをじっと見た。
「ダンブルドアが死んだ夜のことだが、君と一緒に学校を抜け出したと言う者がいてね」
「誰だれが言ったのですか?」ハリーが言った。
「ダンブルドアが死んだ後、塔とうの屋上で何者かが、死し喰くい人びとの一人に『失しっ神しん呪じゅ文もん』をかけた。それに、その場に箒ほうきが二本あった。ハリー、魔法省はその二つを足すことぐらいできる」
「それはよかった」ハリーが言った。
「でも、僕がダンブルドアとどこに行こうと、二人が何をしようと、僕にしか関わりのないことです。ダンブルドアはほかの誰にも知られたくなかった」
「それほどまでの忠ちゅう誠せい心しんは、もちろん称しょう賛さんすべきだ」
スクリムジョールは、苛立いらだちを抑おさえるのが難むずかしくなってきているようだった。
「しかし、ハリー、ダンブルドアはいなくなった。もういないのだ」
「ここに、誰だれ一人としてダンブルドアに忠ちゅう実じつな者がいなくなったとき、ダンブルドアははじめてこの学校から本当にいなくなるんです」
ハリーは思わず微笑ほほえんでいた。
「君、君……ダンブルドアといえども、まさか蘇よみがえることは――」
「できるなんて言ってません。あなたにはわからないでしょう。でも、僕には何もお話しすることはありません」