スクリムジョールは躊ちゅう躇ちょしていたが、やがて、気遣きづかいのこもった調子を装よそおって言った。
「魔法省としては、いいかね、ハリー、君にあらゆる保ほ護ごを提供できるのだよ。私の『闇やみ祓ばらい』を二人、喜んで君のために配備はいびしよう――」
ハリーは笑った。
「ヴォルデモートは、自分自身で僕を手にかけたいんだ。『闇祓い』がいたって、それが変わるわけじゃない。ですから、お申し出はありがたいですが、お断ことわりします」
「では」スクリムジョールは、いまや冷たい声になっていた。
「クリスマスに、私が君に要請ようせいしたことは――」
「何の要請ですか? ああ、そうか……あなたがどんなにすばらしい仕事をしているかを、僕が世の中に知らせる。そうすれば――」
「――みんなの気持が高揚こうようする!」
スクリムジョールが噛かみつくように言った。ハリーはしばらく、スクリムジョールをじっと観察した。
「スタン・シャンパイクを、もう解放かいほうしましたか?」
スクリムジョールの顔色が険悪けんあくな紫色に変わり、いやでもバーノンおじさんを彷彿ほうふつとさせた。
「なるほど。君は――」
「骨の髄ずいまでダンブルドアに忠実」ハリーが言った。「そのとおりです」
スクリムジョールは、しばらくハリーを睨にらみつけていたが、やがて踵きびすを返し、足を引きずりながら、それ以上一言も言わずに去っていった。パーシーと魔法省の一団が、席に座ったまますすり泣いているハグリッドとグロウプを不安げにちらちら見ながら、大臣を待っているのが見えた。ロンとハーマイオニーが急いでハリーのほうにやってくる途中、スクリムジョールとすれ違った。ハリーはみんなに背を向け、二人が追いつきやすいようにゆっくり歩き出した。ブナの木の下で、二人が追いついた。何事もなかった日々には、その木陰こかげに座って三人で楽しく過ごしたものだった。