「ドビーめはそうは思いません。ドビーめは、いっつもなんだかんだと自分にお仕置きをしていないといけないのです。ご主人様は、ドビーめに勝手にお仕置きをさせておくのでございます。ときどきお仕置きが足りないとおっしゃるのです……」
「どうして家出しないの 逃げれば」
「屋敷しもべ妖精は解かい放ほうしていただかないといけないのです。ご主人様はドビーめを自由にするはずがありません……ドビーめは死ぬまでご主人様の一家に仕えるのでございます……」
ハリーは目を見み張はった。
「僕なんか、あと四週間もここにいたら、とっても身が持たないと思ってた。君の話を聞いてたら、ダーズリー一家でさえ人間らしいって思えてきた。誰か君を助けてあげられないのかな僕に何かできる」
そう言ったとたん、ハリーは「しまった」と思った。ドビーはまたしても感かん謝しゃの雨あられと泣きだした。
「お願いだから」ハリーは必ひっ死しで囁ささやいた。「頼むから静かにして。おじさんたちが聞きつけたら、君がここにいることが知れたら……」
「ハリー・ポッターが『何かできないか』って、ドビーめに聞いてくださった……ドビーめはあなた様さまが偉い大だいな方だとは聞いておりましたが、こんなにおやさしい方だとは知りませんでした……」
ハリーは、顔がポッと熱くなるのを感じた。
「僕が偉大だなんて、君が何を聞いたか知らないけど、くだらないことばかりだよ。僕なんか、ホグワーツの同学年でトップというわけでもないし。ハーマイオニーが――」
それ以上は続けられなかった。ハーマイオニーのことを思い出しただけで胸むねが痛んだ。
「ハリー・ポッターは謙けん虚きょで威い張ばらない方です」
ドビーは球ボールのような目を輝かがやかせて恭うやうやしく言った。