「もうちょい――」車の中から引っ張っていたフレッドが、あえぎながら言った。「あとひと押し……」
ハリーとジョージがトランクを肩の上に載のせるようにしてぐっと押すと、トランクは窓から滑すべり出て車の後部座席に収まった。
「オーケー。行こうぜ」ジョージが囁いた。
ハリーが窓まど枠わくを跨またごうとしたとたん、後ろから突とつ然ぜん大きな鳴き声がして、それを追いかけるようにおじさんの雷かみなりのような声が響ひびいた。
「あのいまいましいふくろうめが」
「ヘドウィグを忘れてた」
ハリーが部屋の隅すみまで駆かけ戻もどったとき、パチッと踊おどり場ばの明りが点ついた。ハリーは鳥とり籠かごを引ひっつかんで窓までダッシュし、籠をロンにパスした。それから急いで箪たん笥すをよじ登ったが、その時、すでに鍵かぎの外はずれているドアをおじさんがドーンと叩たたき――ドアがバターンと開いた。
一いっ瞬しゅん、バーノンおじさんの姿が額がく縁ぶちの中の人物のように、四角い戸口の中で立ちすくんだ。次の瞬しゅん間かん、おじさんは怒いかれる猛もう牛ぎゅうのように鼻息を荒あららげ、ハリーに飛びかかり、足首をむんずとつかんだ。
ロン、フレッド、ジョージがハリーの腕うでをつかんで、力のかぎり、ぐいと引ひっ張ぱった。
「ペチュニア」おじさんが喚わめいた。「やつが逃げる やつが逃げるぞー」
ウィーズリー三兄弟が満まん身しんの力でハリーを引っ張った。ハリーの足がおじさんの手からするりと抜けた。ハリーが車に乗り、ドアをバタンと閉めたと見るや、ロンが叫さけんだ。
「フレッド、いまだ アクセルを踏ふめ」
そして車は月に向かって急上じょう昇しょうした。