「たいしたことないだろ」とロンが言った。
「すっごいよ」ハリーは、プリベット通りをチラッと思い浮うかべ、幸せな気分で言った。
四人は車を降おりた。
「さあ、みんな、そーっと静かに二階に行くんだ」フレッドが言った。「お袋が朝食ですよって呼ぶまで待つ。それから、ロン、おまえが下に跳とびはねながら下りていって言うんだ。『ママ、夜の間に誰が来たと思う』そうすりゃハリーを見てお袋は大喜びで、俺おれたちが車を飛ばしたなんてだーれも知らなくてすむ」
「了りょう解かい。じゃ、ハリーおいでよ。僕の寝しん室しつは――」
ロンはさーっと青ざめた。目が一カ所に釘くぎづけになっている。あとの三人が急いで振ふり返った。
ウィーズリー夫ふ人じんが庭の向こうから、鶏を蹴け散ちらして猛もう然ぜんと突き進んでくる。小こ柄がらな丸っこい、やさしそうな顔の女性なのに、鋭するどい牙きばをむいた虎とらにそっくりなのは、なかなか見物だった。
「アチャ」とフレッド。
「こりゃ、だめだ」とジョージ。
ウィーズリー夫人は四人の前でぴたりと止まった。両手を腰こしに当てて、バツの悪そうな顔を一人ひとりずいーっと睨にらみつけた。花はな柄がらのエプロンのポケットから魔法の杖つえが覗のぞいている。
「それで」と一ひと言こと。
「おはよう、ママ」ジョージが、自分では朗ほがらかに愛あい想そよく挨あい拶さつしたつもりだった。
「母かあさんがどんなに心配したか、あなたたち、わかってるの」ウィーズリー夫ふ人じんの低い声は凄すごみが効きいていた。
「ママ、ごめんなさい。でも、僕ぼくたちどうしても――」
三人の息むす子こはみんな母親より背が高かったが、母親の怒いかりが爆ばく発はつすると、三人とも縮ちぢこまった。