ウィーズリー夫人は、あちこちガチャガチャいわせながら、行き当たりばったり気ぎ味みに朝食を作っていた。息子たちには怒りの眼まな差ざしを投げつけ、フライパンにソーセージを投げ入れた。ときどき低い声で「おまえたちときたら、いったい何を考えてるやら」とか、「こんなこと、絶ぜっ対たい思ってもみなかったわ」と、ぶつぶつ言った。
「あなたのことは責せめていませんよ」
ウィーズリー夫ふ人じんはフライパンを傾けて、ハリーのお皿に八本も九本もソーセージを滑すべり込こませながら念ねんを押した。
「アーサーと二人であなたのことを心配していたの。昨さく夜やも、金曜日までにあなたからロンへの返事が来なかったら、わたしたちがあなたを迎むかえにいこうって話をしていたぐらいよ。でもねえ」今度は目玉焼きが三個もハリーの皿に入れられた「不正使用の車で国中の空の半分も飛んでくるなんて――誰かに見られてもおかしくないでしょう――」
彼女があたりまえのように、流しに向むかって杖つえを一ひと振ふりすると、中で勝手に皿さら洗あらいが始まった。カチャカチャと軽い音が聞こえてきた。
「ママ、曇くもり空だったよ」とフレッド。
「物を食べてる時はおしゃべりしないこと」ウィーズリー夫人が一いっ喝かつした。
「ママ、連れん中ちゅうはハリーを餓が死しさせるとこだったんだよ」とジョージ。
「おまえもお黙だまり」とウィーズリー夫人が怒ど鳴なった。そのあとハリーのためにパンを切って、バターを塗ぬりはじめると、前より和やわらいだ表情になった。
その時、みんなの気を逸そらすことが起こった。ネグリジェ姿の小さな赤毛の子が、台所に現れたと思うと、「キャッ」と小さな悲ひ鳴めいをあげて、また走り去ってしまったのだ。